見もの・読みもの日記

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三たび、洋風画/狩野派以外学習帳(板橋区立美術館)

2023-08-26 23:55:39 | 行ったもの(美術館・見仏)

板橋区立美術館 『館蔵品展 狩野派以外学習帳 江戸にきらめいた民間の絵師たち』(2023年8月26日~10月1日)

 今日から始まった展覧会をさっそく見てきた。というのも都営地下鉄の「夏のワンデーパス」(500円)を利用できるのが今週末までだったので。東京東部の我が家から出かけると往復で300円くらい得になるのだ。

 本展のポスター、「狩野派以外」の「以外」が強調のマルで囲まれている。同館では、江戸絵画の正統を成した江戸狩野派に注目した館蔵品展「狩野派学習帳」を2020年に開催したが、本展はその第二弾として、民間の絵師の作品を中心に紹介するものだという。

 そう聞いて展示室に入ったら、冒頭が狩野探幽の『富士山図』であれっと思った。狩野尚信の『富士見西行・大原御幸図屏風』もあり(なるほど西行と後白河を対にするのか)、狩野雅信の『御殿山筑波山遠望図』もあり(宿舎から見ていた筑波山と同じ姿だ)。本展は、二つの画題「富士山」と「牡丹」に着目し、江戸狩野派と民間絵師を比較する趣向なのだ。狩野派に続いては、司馬江漢が4件並ぶ。実は本展、出品47件のうち、18件が、洋風画で有名な歸空庵(帰空庵)コレクションの作品である。昨年は人物画を見せてもらったが、今年は風景(富士山)と花鳥画(牡丹)か!

 司馬江漢の『深川洲崎富士遠望図』。「江東区の仲町あたり」という説明が付いていたが、木場から東陽町あたりというのが正しいだろう。水平線の彼方に富士山が見えたのだな。司馬江漢は、この絵のほか、『鉄砲洲富士遠望図』にも浜辺のわんこを描いていて「犬好きだったらしい」という。

 亜欧堂田善とか小野田直武とか、洋風画のビッグネームが並ぶ中で、私が気になったのは作者不詳の江戸風景図セット。泥絵具を用いて量産された土産物だというが、郷愁を誘われる。昭和30~40年代くらいまでは、生活のどこかにこういう民衆画が存在していたように思う。銭湯のペンキ絵の富士山も同じ。

 これは福島県須賀川の十念寺の住持をつとめた白雲の作。亜欧堂田善と同郷の画僧である。

 これはオランダ人ヤン・フェデリック・フェイルケ(出島のオランダ商館の外科医として来航、江戸参府に随行)による墨画。画面左の賛は中国人による。フェイルケ、出島で病死したというが、どこかにお墓はあるのかな。あるなら参拝してみたい。

 第2展示室は「牡丹」を取り上げ、狩野派の「お手本どおり」の平面的な牡丹と、南蘋ふうの新しい写実画法を比較する。確かに宋紫石や小野田直武の描く牡丹は、質感や立体感に富むが、やり過ぎると気持ち悪くなるのが微妙なところだ。

 これは徳雄院という謎の絵師の『牡丹金魚図』。「お殿様の遊芸かな」というキャプションが添えられていたけど、私はこのくらいの雰囲気が好ましい。

 

 また、最近修復を終えた3作品、啓孫『達磨図』、英一蝶『一休和尚酔臥図』、住吉廣尚・廣隆『春秋遊楽図屏風/四季花鳥図屏風』も公開されていた。特に屏風は立てることができなかったものを立てて展示できる状態にしたそうで、本当によかった。資金の一部はクラウドファンディングで補ったという(昨年やっていたらしいが、知らなかった)。

 展示室内で、高齢のご夫婦が「こんなにたくさんあって、無料ってすごいわねえ」(※館蔵品展なので無料)「うちの〇区には美術館がないものねえ」と感心しきりの会話をしているのを耳にした。いやまったく。板橋区、ほかの住民サービスは知らないけれど、この美術館に来るたびに住民になりたいと思う。

とんでもない!また来ます!


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