見もの・読みもの日記

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麦殿大明神再び/疫病・たいさ〜ん!(アーツ千代田3331)

2021-05-24 13:47:35 | 行ったもの(美術館・見仏)

アーツ千代田3331 特別企画展『疫病・たいさ〜ん!江戸の人々は病いとどう向き合ったか』(2021年4月17日〜 5月30日)

 感染症がたびたび蔓延した江戸時代に着目し、魔除けの赤を用いた疱瘡絵や麻疹絵など、疫病退散の願いから生まれた様々なものを通して、パンデミックが当時の暮らしや文化にもたらした影響や、禍に立ち向かい打ち勝とうとした江戸の人々の姿を紹介する。

 同施設では、千代田区内で行われる「神田祭」「山王祭」の時期にあわせ、地域の歴史や文化を紐解き、その魅力を発信する特別企画展を2013年より開催してきたそうで(※アーカイブ)、私の趣味にピタリ合うのに全然知らなかった。今回の企画にも気づいていなかったが、緊急事態発令とその延長の際、美術館の動向をまとめサイトで見ていたら、再開+会期延長(当初予定は5月16日まで)の情報が載っていて気づいた。 なんと監修は木下直之先生ではないか!ということで、さっそく見に行った。

 1部屋だけの小さな展示だが、江戸と現代の「疫病退散」グッズがいろいろ展示されている。アマビエ、もとの資料(瓦版)では、弘化3年4月(1846年5月)の出現だそうだが、まさか175年後に「私シ写シ人々二見せ候得」が全国規模で成就するとは誰も思わなかっただろうなあ。このまま100年後、200年後まで定着してほしい。

 ↓これは、馬喰町にあった淡島屋の軽焼きの袋。軽焼きは「病を軽くする」という語呂合わせから病気見舞いに好んで使われた。淡島屋は紙袋に錦絵(多色摺)の疱瘡絵や麻疹絵をあしらうことで、とりわけ評判を得た。文学者の淡島寒月(1859-1926)はこの店主の息子。

 軽焼き(軽焼きせんべい)とは「もち米の粉に砂糖を加えて焼いたせんべい」だという。砂糖が重要なのだな。ちょっと調べたら津山(岡山県)の武田待喜堂の銘菓「初雪」が近いようだ。食べてみたい。関西農業史研究会のサイトに「美作津山における近世の軽焼献上と近代の名菓初雪/橋爪伸子」というレジュメが公開されていて、軽焼きへの言及がある。

 展覧会の会場には麦殿大明神が来臨。2019年2月、ギャラリーエークワッドでの展示『木下直之全集』とは、また異なる姿を見せている。前回は金物屋の道具で誕生した「つくりもん」だったが、今回は籠細工だ。

 会場には、木下先生が蔵前の籠物屋(たぶんここ→水木屋馬場商店)で道具を選ぶ様子から、来臨した麦殿大明神を背負って、神田明神を参拝し、お祓いを受ける様子がビデオで流れている(Youtubeでも公開)。不要不急の極致? いや、麦殿大明神は、麻疹という疫病と戦う神様だから、こんな時代にこそ必要なのだ。

 今回、足元には邪鬼を踏みつけているが、その邪鬼の背中にお賽銭が載っているのが微笑ましかった。私も小銭を1枚足してきた。

 


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