〇東京長浜観音堂 『十一面観音立像(長浜市高月町渡岸寺 向源寺(渡岸寺観音堂))』(2024年11月1日~12月1日)
日本橋の東京長浜観音堂がついに閉館することになった。最後の展示は、国宝十一面観音で有名な渡岸寺(向源寺)から、像高39センチの、檀像ふうの小さな十一面観音がおいでになった。やや横に広いお顔立ち、肉付きのよい肩幅だが、背後にまわると、腰高でほっそりした印象に変わる。襟を広げたうなじが美しい。左の脇腹に引き付けるように水瓶を持ち、右手(くっきりした掌の皺)は下に垂らす。着衣のあちこちには華麗な截金が残る。現地でお会いした記憶がないのは、収蔵庫でなく、本堂に安置されている(本堂はあまり熱心に参拝していない)ためか。もとは国宝十一面観音のお前立ちだったそうである。撮影禁止のため、施設に貼ってあったチラシから。
最終日の12月1日は、夕方から薩摩琵琶の「さようならコンサート」が開催されたのだが、万一、行き逃すと悔いが残ると思ったので、朝のうちにお別れをしてきた。展示室となりのイベントスペースでは、写真家・駒澤琛道氏による長浜の仏さまと観音の里風景の写真パネルが展示されていた。渡岸寺の国宝十一面観音の写真も見ることができて、嬉しかった。あと、いいなあと思ったのは、和蔵堂(善隆寺)の十一面観音、多田幸寺の薬師如来。洞戸の地蔵菩薩は、大きな鞘仏と小さな胎内仏が、親子みたいで愛らしかった。
長浜市のこの事業、上野・不忍池の東畔に「びわ湖長浜KANNON HOUSE」がオープンしたのは2016年3月である。当時、私はつくば在住で、2017年に東京に引っ越したが、仕事が忙しくて、なかなか同館に足を向けることができなかった。2020年10月に「KANNON HOUSE」が閉館(このときの記事に渡岸寺の小さいほうの十一面観音の写真あり)、その半年後、2021年7月に「東京長浜観音堂」がオープンした。私自身がリタイアモードに入ったこともあり、自宅から徒歩圏という気軽さもあって、こちらでは全企画を拝見させていただいた。コロナ禍の間も展示を継続していただき、本当にありがとうございました。
長浜市の学芸員さんが交替制でおいでになっており(一時期は常駐)、フランクなお話を聞けたのがとても楽しかった。今後もしばらくは、前を通るたびに思い出すだろうな、八重洲セントラルビル。
来年2月に東博でファイナルイベントがあると聞いているので、絶対に行きたい。長浜にもまた必ず行きます。