見もの・読みもの日記

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2024年11月関西旅行:東大寺、春日大社、東寺他

2024-11-10 17:32:38 | 行ったもの(美術館・見仏)

東大寺・三月堂、二月堂、大仏殿裏

 三連休最終日、正倉院展は昨日の参観で満足したので、朝から東大寺境内を散歩する。大好きな三月堂をゆっくり拝観し、二月堂でご朱印をいただく。女性の方に書いていただくのは、昨年に続いて二度目。前回は男性の方と同じ太筆だったが、今回は細筆の繊細な「南無観」をいただいた。

 大仏殿の裏手では、この数年、ずっと整備工事(のようなもの)が行われている。「東大寺 講堂・三面僧房跡整備事業」という案内版によると、ここには講堂と、東・北・西をコの字状に囲む三面僧房が建っていたとされており、講堂跡の礎石がよく残っている。しかし講堂跡の北側を流れる川による遺構の浸食が進んでいるため、護岸工事をしているのだそうだ。

 遺構の北側には正倉院があるのだが、まわりは高い塀で囲まれており、開門は10時だというので見学はあきらめることにした。

東大寺ミュージアム 特集展示『捨目師の作った伎楽面』(2024年10月18日~2025年2月7日)+特集展示『理源大師聖宝と東大寺東南院』(2024年10月18日~11月20日)

 特集展示では、奈良博との連携で伎楽面5件を展示。また東南院の初代院主である理源大師聖宝については主に文書の展示だったが、このひと、宇治拾遺物語「聖宝僧正、一条大路を渡る事」の登場人物だったのか。初めて認識。

春日大社国宝殿 秋季特別展『春日漆の国宝と雲龍庵の漆芸-世界が認めた超絶技巧-』(2024年8月11日~12月13日)

 春日大社の国宝の漆芸品と、現代の漆芸として世界的に高く評価されている雲龍庵・北村辰夫の作品を同時に展示する。北村辰夫氏は石川県輪島市の生まれで、今年1月の能登半島地震で輪島市の工房が被災したため、金沢市に工房を移して作品の制作を続けているという。繊細で愛らしい作品が多くてうっとりした。私には一生縁がなさそうだけど、高級な漆芸品、ひとつくらい身近に欲しい。

 帰路、春日野で古風な装束姿でボール遊びをする集団を見かけた。一瞬、蹴鞠かと思ったが、ふつうのボール(サッカーボール?)で遊んでいた。

 興福寺の五重塔は、明治時代以来120年ぶりとなる大規模な保存修理工事を実施中でこの状態。完了は令和13年(2031)3月の予定だという。長い!

花園大学歴史博物館 秋季企画展『100年遠諱記念 南天棒』(2024年10月7日~12月24日)

 京都へ戻って気になっていた展覧会へ。南天棒の異名を持つ中原鄧州(1839-1925)ゆかりの品々を展観する。私は『雲水托鉢図』を好んで描いた謎の禅僧くらいの認識しかなく、活躍年代も曖昧だったのだが、意外と近代の人物で、乃木希典や児玉源太郎とも交流があった。

東寺宝物館 『東寺観智院の聖教をまもり伝える-真言宗の勧学院-』(2024年9月20日〜11月25日)、国宝 五重塔『初層の特別公開』(2024年10月26日〜12月8日)、観智院

 この三連休は、さすがに帰りの新幹線を予約しており、まだ少し時間があったので、東寺に寄っていくことにした。講堂・金堂と宝物館を見たかったのだが、前者には五重塔、後者には観智院がセットになっていたので、久しぶりにフルコースの参観となった。

 金堂の須弥壇の背後に入り込めるようになったのはいつからだろう? いわゆる立体曼荼羅を全方向から見ることができて嬉しかった。尊格を支える象や水牛のお尻がかわいい。

 宝物館の展示では、江戸時代に観智院聖教を守った杲快、賢賀の事蹟が興味深かった。聖教を守ったといっても、裏打ちなどの修理をしたり、保存箱を作成したり、新しい表紙を付けたり、詳細な奥書を記したり、地味なのである。しかし、こういう堅実な作業があってこそ聖教が伝わったのだと思う。

 最後に観智院へ。宮本武蔵が描いた襖絵と、唐の長安から請来した五大虚空蔵菩薩像を拝見。しかし、もうひとつ私の記憶に残っていた「空海の帰国の様子を表現した石庭」がない。白砂を敷き詰めたお庭は見せてもらったのだが、船や怪魚に似せた石組みはなかった。帰り際、お土産品売り場に古い写真集があったので、パラパラめくってみると石庭「五大の庭」の写真が載っていた。勇気を出して受付の若いお姉さんに「この写真の庭はどこか別のところにあるのでしょうか?」と聞いてみたが、定かには知らない様子。後ろにいたお兄さんも「2017年に改修をしたので、だいぶ変わっていると思います」と言っていた。

 まあ「昭和の作」と言っていたから、そんなに古いものではないのだが、森浩一さんの『京都の歴史を足元からさぐる』にも取り上げられていた庭なので、少し残念である。京都も奈良も、こうして少しずつ変わっていくのだな、と思った。


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