見もの・読みもの日記

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持つべきものは仲間/中華ドラマ『大理寺少卿游』

2024-03-17 23:55:57 | 見たもの(Webサイト・TV)

〇『大理寺少卿游』全36集(愛奇藝、2024年)

 原作はマンガ「大理寺日誌」でアニメ版もあり、日本にもファンが多いことは伝え聞いていたが、私はこのドラマで初めて作品世界に触れた。舞台は唐・武則天の時代の神都・洛陽。刑罰と司法を所管する大理寺の面々が活躍する。大理寺の若きリーダー李餅(丁禹兮)は、マンガとアニメでは人間の衣服を着た白猫の姿で描かれる。ドラマ版の李餅は、基本的には人間の姿だが、猫のように動きは俊敏、猫並みの視力と嗅覚の持ち主。時々、猫の顔になったり、まれに完全に猫の姿に変身することもある。

 田舎育ちの陳拾は、生き別れの兄を探して上京し、洛陽城で不思議な猫に出会う。この猫こそ実は李餅。李餅は前の大理寺卿・李稷の息子だが、かつて何者かに父親を殺害され、さらに葬儀のために故郷へ戻る途中を襲われ、気づいたときは奇妙な体質(半人半猫?)を獲得していたのだった。その頃、神都は妖猫出現の噂に動揺していた。李餅は、妖猫事件の真相を解明したことで聖人(皇帝)に引き立てられ、大理寺少卿に任じられる。李餅は自分の秘密を知る陳拾を連れて大理寺に入る。

 李餅を待っていたのは、明鏡堂の仲間たち。お調子者の王七(女装が得意)。官話が苦手な胡人の阿里巴巴(実は富裕な西域国の王子)。つねに不運を呼び込む星まわりの崔倍。従軍経験のある武闘派の孫豹。抜群に有能とは言えないけれど、仲間思いの彼らが、チームワークでさまざまな難事件を解決に導く。ただ、中盤までは、どの事件も本当に解決なの?という疑問を残して進んでいくので、ちょっとフラストレーションが溜まった。ポーカーフェイスの金吾衛将軍・邱慶之とか、やはり半人半猫の残忍な怪人・一枝花とか、気になるキャラは見え隠れするのだが、どう決着するのか、なかなか分からなかった。

 【ネタバレ】終盤は怒涛の種明かし。李家を襲った刺客・黒羅刹の正体は、陳拾の双子の兄だった。刺客を放ったのは宮廷の大官である上官大人。さらにその背後には永安閣と呼ばれる元老たちがいた。彼らは、子墟国に伝わる不老不死の法を求めて同国との戦争を起こし、秘密を握る怪物・一枝花を捕えようとしていたのである。彼らの意図に気づいた大理寺卿・李稷は、邪魔者として始末された。

 邱慶之は李家の奴僕として育ったが、李稷は彼の才能を愛し、李餅とは知己の間柄だった。子墟国との戦いに志願した邱慶之は、辺境の地で一枝花を知る。その後、邱慶之が再び一枝花に出会ったのは、まさに李餅が黒羅刹に襲われた直後だった。邱慶之は一枝花に李餅の命を救う方法を請い、一枝花は李餅を半人半猫の妖怪に変えてしまう。以来、邱慶之は李餅を人間に戻す方法を探していた。そして、自分の命と引き換えに手に入れた霊薬の石を李餅に託して事切れる。

 李餅は一枝花に取引を迫る。永安閣の元老たちの罪状を証言するなら、この石をお前に与えよう。石はひとつしかない。李餅は、自分が普通の人間でないことをすでに明鏡堂の仲間たちに知られていた。けれども彼らは全く動じなかった。彼らにとって李餅は李餅なのだ。神と呼ばれ、妖怪と蔑まれてきた一枝花は、敗北を認めて人間に戻ることを選択する。この結末は全く予想外で、かなり感動した。

 明鏡堂の面々は、それぞれ人に言えない秘密やコンプレックスを持って登場し、それを乗り越えていく。李餅さえも、半人半猫という秘密がバレることを極度に恐れていたのだが、ありのままを仲間たちに肯定されることで、確固とした自己肯定感を獲得する。いや~ほんと、終盤はみんな強くなって、的確な判断で動けるようになっていて、私は母親目線で感心した。文字を知らなかった陳拾が、檄文を書いて市井の人々を動かし、李餅と仲間たちを助けに来るのもよかった。邱慶之(魏哲鳴)の死だけが報われなくて悲しい。

 本作では、若い俳優さんたち(90年代生まれ)をたくさん新しく覚えた。李稷(于栄光)とか上官大人(連奕名)とか、要所に渋い俳優さんを使っているのもよかった。大理寺のもうひとりの少卿・上官檎(女性)も好きだった。任敏にしては癖がないキャラクターで、阿里巴巴の憧れの存在。ほかにも明鏡堂メンバーと関わる女性キャラは、いることはいるが、甘い恋愛モードはほぼ無し。男子たちの「明鏡堂少一箇人、就不是明鏡堂了」(ひとりでも欠けたら、明鏡堂じゃない)というフラットな友情が、スカッと気持ちのいいドラマである。


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