見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2022年8月@東京:展覧会拾遺

2022-09-04 22:52:30 | 行ったもの(美術館・見仏)

 8月、東京近郊の展覧会にもそれなりに行っているのだが、ぜんぜんレポートが書けていないので、せめて記録のみ。

サントリー美術館 『歌枕 あなたの知らない心の風景』(2022年6月29日~8月28日)

 見に行ったのは前期。冒頭に『柳橋水車図屏風』が出ていると思ったら、京博の所蔵品だった。古筆切は、超名品はなかったが、かえって行成、定頼、貫之などの伝承筆者の筆跡を見比べることができて楽しかった。

三井記念美術館 リニューアルオープンII 『茶の湯の陶磁器 "景色"を愛でる』(2022年7月9日〜9月19日)

 微妙な「景色」を重視する高麗茶碗や志野茶碗は苦手だな、と思いながら見に行ったが、けっこう楽しめた。やっぱり好きなのは楽茶碗。左入の赤楽茶碗「ひがきの絵」は、ほぼピンク色でかわいい。信楽不識形大水指「山猫」は、いい銘だと思った。横に広いどっしりしたかたちで、山猫の毛並みみたいなムラのある茶色をしていた。

太田記念美術館 『浮世絵動物園』(2022年7月30日~9月25日)

 さまざまな動物の登場する浮世絵約160点(前後期で完全入れ替え)を展示。同館ファンにはおなじみ「虎子石」の図、それから月岡芳年の『歌川国芳肖像』(ちょこんと猫がいる)も見ることができて嬉しかった。 鯰絵は風刺がキツいが笑ってしまう。

大倉集古館 企画展『合縁奇縁~大倉集古館の多彩な工芸品~』(2022年8月16日~10月23日)

 大倉集古館は、明治35年(1902)に大倉喜八郎が自邸の一部を美術館として公開した大倉美術館を前身とし、大正6年(1917)日本で最初に財団法人化した、現存最古の私立美術館だという。本展では、そのコレクションの多彩な姿を紹介。アジアで事業を展開した喜八郎らしく、清朝・光緒帝時代の蟒袍(マンパオ)や甲冑(綿襖甲)があったり、張作霖の写真があったりした。日本で最初期の陶俑コレクターであり、世界一とうたわれた漆工コレクションを有していたが、関東大震災で失われてしまったそうである。

五島美術館 秋の優品展『禅宗の嵐』(2022年8月27日~10月16日)

 墨跡はよく分からないが、一山一寧の『園林消暑偈』の飄々とした草書、夢窓疎石『古徳偈』の洗練された行書には惹かれる。禅画は『六租挟担図』『対月図』『政黄牛図』が並んでいたのが豪華だった。

東京ステーションギャラリー 『東北へのまなざし1930-1945』(2022年7月23日~9月25日)

 1930年代以降、東北地方の建築や生活用品に注目した人々、ブルーノ・タウト、柳宗悦、シャルロット・ペリアン、今和次郎などを取り上げる。いまいち趣旨が分からないまま見に行ったのだが、面白かった。タウトがこんなにも東北の工芸に魅入られ、かつ仙台の商工省工藝指導所でデザインの指導を行っていたことも始めて知った。今和次郎は、東北の生活改善にも力を注ぎ、試験農家家屋の設計もしているのだな。しかし成功はしなかったようだ。柳宗悦の「民藝」はほぼモダニズムで、名取洋之助の日本工房の美意識と共通する、という指摘には共感した。

 岩波書店が所蔵する、膨大なタウト関連資料が早稲田大学図書館に寄託されていることをここに記録しておこう。タウトのアルバムには、渋谷のハチ公(生前の姿)の写真が貼り込まれていた。

東洋文庫ミュージアム 企画展『日本語の歴史展』(2022年5月25日~9月25日)

 日本語への理解を深めるための様々なトピックを、所蔵資料によってひもとく。地味なテーマで、近代の活字本がほとんどだが、こういう見せ方もあるか、と勉強になった。黄表紙『日本多右衛門』では「素敵だ」「すばらしい」くらいの意味で「日本だ」を使っていたというのと、馬琴の黄表紙『風俗金魚伝』は中国の小説『金雲翅』のパロディで(原書は)ベトナムでも翻訳されて大人気を博した、という知識が収穫。むかしから東アジアはエンタメでつながっているのだ。

東京藝術大学大学美術館 特別展『日本美術をひも解く-皇室、美の玉手箱』(2022年8月6日~9月25日)

 ふらっと見に行ったらすごい内容だった。古筆好きと絵巻好きは見逃さないほうがいい。後期も行こうと思っているので、詳しいレポートはそのときに。関連して、気になるニュースを貼っておく。

蒙古襲来絵詞や唐獅子図など収蔵「三の丸尚蔵館」、宮内庁から国立文化財機構に移管(読売新聞オンライン 2022/08/23)


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