見もの・読みもの日記

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味のある凸凹コンビ/中華ドラマ『唐朝詭事録』

2022-11-03 22:07:48 | 見たもの(Webサイト・TV)

〇『唐朝詭事録』全36集(愛奇藝、2022年)

 全く注目していなかったドラマだが、本国でも日本のSNSでも評判がいいので見てみた。なるほど、なかなか面白かった。設定は唐の景雲年間(と第1話の字幕にある)、武則天の治世が終わり、中宗の復位を経て、同じく復位した睿宗の治世である。狄仁杰の弟子を以て任ずる文官の蘇無名(検死の知識もある)と、血気盛んな武官の盧凌風のコンビが、さまざまな怪事件に出会い、それを解決していく。

 4~5話で1つの事件が解決する方式で「長安紅茶」「甘棠駅怪談」「石橋図」「黄梅殺」「衆生堂」「鼍神」「人面花」「参天楼」の8つの事件が展開する。最初の「長安紅茶」は長安が舞台で、事件解決の後、蘇無名は公主(モデルは太平公主)に称賛され、南州司馬に昇格して赴任することになる。一方、盧凌風は、行き過ぎた行動が太子の不興を買い、金吾衛中郎将の職を解かれ、長安を放逐されてしまう。蘇無名は盧凌風を「私人参軍」(幕僚)として南州に伴うことにし、「長安紅茶」事件の解決に協力した、酒好きで鶏肉好きの医術の達人・費鶏師も同行することになる。また、名家のお嬢様の裴喜君は、家奴の少年・薛環を連れて、盧凌風を追いかけてくる。喜君は絵画の巧手で、このあと、彼らが旅先で出会う難事件の解決にも役立つことになる。

 この老若男女とりあわせた個性豊かなチームが、本作の魅力のひとつ。子供の頃に見ていた戦隊ヒーローものを思い出した。主人公の盧凌風は、確かに武芸に優れ、頭脳も優秀な青年ではあるものの、はじめは自負心が強すぎて他人と調和できなかったのが、チームの面々に揉まれて、少しずつ大人になっていく描き方もよい。それを見守る喜君は、ただのお嬢様でなく、きちんと自立した女性である。

 「甘棠駅怪談」「石橋図」「黄梅殺」の解決後、盧凌風は橘県の県尉に任ぜられ、蘇無名らの助力を得て「衆生堂」の事件を解決する。次に蘇無名は寧湖の司馬に転任。ここで宗教結社「鼍神社」の事件に関わり、江湖の女侠・桜桃と出会う。桜桃は、不器用だが誠実な蘇無名に惹かれて、以後、蘇無名を影ながら護衛する役割を担う。カッコいいお姉さんなのだ。事件の舞台が長安や洛陽の大都会だけでなく、いろいろ地方色に富むのも楽しい。しかし地方に出てしまうと、どの時代なのか、よく分からなくなるきらいがある。

 「人面花」は洛陽が舞台。若さと美貌を保つ秘薬として女性たちが飛びついた人面花が、実は毒薬だったことが判明する。人面花はパンジーの異名らしいが、ドラマの中では、パンジーに似た花が樹に咲いていて面白かった。そして公主も人面花の毒に当たって解毒薬を待っているという極秘の情報がもたらされ、公主と太子(モデルは李隆基=玄宗か)の対立の表面化が案じられるが、実はまわりの官僚が私欲のために対立しているだけで、両者は互いを思い合っていることが判明。中国ドラマには珍しく、心暖まる皇帝一家だった。

 最後の「参天楼」の舞台は再び長安へ。皇帝は三十三層の高層建築である参天楼(これは全くのフィクションらしい)の落成を記念して幻術大会を開催することにした。異国風の幻術師が次々に登場したけれど、やっぱり幻術といえばペルシャ人なのかな。この機会を狙って、皇帝・太子・公主を全て殺害しようとしたのは沙斯。かつて最晩年の狄仁杰が捕まえようとして取り逃がした人物だった。蘇無名らは、あらかじめ万全の予防策を施し、沙斯の計画を頓挫させた。

 全体として、謎解きの緻密さに欠けるが、怪奇趣味のぞくぞくするエピソードが多く、アクションもCGも派手めで楽しめた。あまり徹底した悪人がいないのも、悪い後味が残らなくてよい。強いていえば、最後に皇帝がその片鱗を見せていたが。沙斯は控鶴府(則天武后が男寵を集めた機関)の一員だったことになっていたり、参天楼の設計者の名前が宇文慕愷だったり(モデルは洛陽城の建設を主導した宇文愷か)、この時代の歴史の知識があると、より楽しめると思う。

 蘇無名役の楊志剛は初めて知ったけれど、好きなタイプ。食えないおじさん役がすごく似合っていた。盧凌風役の楊旭文は、2017年版『射雕英雄伝』の郭靖か。ずいぶん大人っぽくなって、キレのあるアクションを見せてくれた。あと、意外なところにベテランの俳優さんを起用しているので、それを見つけるのも楽しみのひとつだった。


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