太陽は美しく輝き
あるひは 太陽の美しく輝くことを希(こいねが)ひ
手をかたくくみあはせ しづかに私たちは歩いて行つた
かく誘ふものの何であらうとも 私たちの内の 誘はるる清らかさを私は信ずる
無縁のひとはたとへ 鳥々は恒に変わらず鳴き
草木の囁(ささや)きは時をわかたずとするとも いま私たちは聴く 私たちの意志の姿勢で それらの無辺な広大の讃歌を
あゝわがひと 輝くこの日光の中に忍びこんでゐる 音なき空虚を 歴然と見わくる目の発明の 何にならう
如(し)かない 人気(ひとけ)ない山に上(のぼ)り 切に希はれた太陽をして
殆(ほとん)ど死した湖の一面に遍照さするのに
『わがひとに与ふる哀歌』
伊東静雄(1906~53)