暖かな日に曽我の梅林を歩いて来ました。 今年は寒いせいか、まだ少し開花が遅れているようです。
曽我の地は古く『曽我郷』と呼ばれ、これまで梅の花がかおる里、曽我兄弟のふるさとの地として知られてきました。
曽我の郷の魅力は、緩やかに起伏する曽我丘陵の所々に雑木林が残り、谷間には清らかな水が流れ、その沢の奥には滝が懸かって、しっとりと落ち着いた風情も懐かしいところです。
梅林の続く中の細道は鎌倉時代からの伝承を語る古道で、道端には宝篋印塔・五輪塔・石仏など、石造建造物も少なくありません。 そして振り返れば、足元の足柄平野の先には相模湾が陽に光り、箱根連山が展開し、晴れた日には富士ものぞいています。
このように美しい風景の中に、数多い史跡や文化財を秘めている地が曽我の郷であります。
梅林内は緩やかな傾斜は有るものの、ブラブラ歩きながら観梅するには気になりません。
青空に紅梅や白梅そして、葉の出る前に直径2cmほどの香りのよい黄花を下向きにつけるロウバイも見かけました。
梅も葉に先だって開く花は5弁で、ロウバイ同様 香気が高く顔を近づけると、とても良い香りがします。
色鮮やかな花を見たり香りの中にいると、風は冷たいが直ぐそこに春が見え隠れしています。
春さき、梅の花を、チラホラ見かける頃ほど、平和と日本の土の香を感じるときはない。
私は梅が好きで、いつか「梅」の随筆をまとめてみたいと思っている。
梅に関する折々の感興や話題を古今に集めたら、たちどころに一冊にはなる。
吉川英治著 『梅ちらほら』抜粋
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