さて、岩手県の震災関連施設としては、昨年オープンした陸前高田市にある「いわてTSUNAMIメモリアル(東日本大震災津波伝承館)」を紹介したいと思う。
こちらはアクセスは抜群。BRTの駅が施設の真ん前の駐車場に設置されている。高田松原津波復興記念公園内にあり、道の駅「高田松原」も併設、例の「奇跡の一本松」のすぐ脇にあることからも、この日も多くの観光客が訪れていた。人の入りでは今回紹介している中では群を抜いている。まあ、唯一無料だしね。
ネーミングのとおり「津波」に特化したした施設。というのも、東日本大震災で犠牲となった方が1600人以上(不明者200人)という陸前高田市は、市町村別では宮城県石巻市に次ぐ死者数だが、そのほとんどが津波によるものである。それを教訓とし、悲しみを繰り返さないために、岩手県は公園とともに整備を進めているものである。
海岸線から市街地のほとんどが津波により浸水。唐桑半島と広田岬に囲まれ、複雑かつ奥深い広田湾、そして幾分海岸線に平野が広がる土地で、人口がこの平地に密集していたということが、津波被害を大きくしたのだと考えられる。
ここでもガイダンスシアターがあって、「命を守り、海と大地と共に生きる」というテーマで、施設設置の趣旨や全体の構成を紹介している。
ただ、入口を進むと、中央のホールに折れ曲がった橋桁(鋼製)とめちゃくちゃに潰れた消防車が展示されており、来場者に強烈なインパクトを与えるとともに、何の解説も必要とせずとも津波の脅威が伝わってくる。
また地方整備局だろうか県庁だろうか、防災指令室のようなところがあって、当時のやり取りが音声で流れ、被災地の映像などが映し出されるコーナーもリアルで緊迫感がある展示でした。
ここには岩手県三陸沿岸を中心として、各地から提供された資料や展示物も集められているので、三陸全体が受けた被害や惨状、復旧・復興などの対策についても知ることができる。
被災直後、消防団や地元建設業者の活躍などを紹介するコーナーなどもあり、他の施設にはなかなか見られなかった視線がある。「逃げる、助ける、支える」などの視点から津波時の人々の行動をひも解くことで、命を守る教訓にしようという展示もいい。
特に気になるのは、津波の歴史を紹介するコーナーで、三陸は何度となく津波の被害を受けているということ。明治の「明治三陸地震」によるものからひも解いてみると、30年から50年というスパンで大津波の被害に見舞われていることが分かる。
更に専門家の調査によると、M9級地震による津波は3500年間で7回は襲来し被害が出ているものと思われるとのこと。まさに津波と戦ってきた地域であることが分かる。
この施設でも多くの語り部がガイドとして活躍しているが、他の団体を案内している解説に耳を傾けてみると、繰り返す津波被害を教訓にして生きてきた地域の方々の思いが伝わってきます。