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何も考えずに、でも何かを求めて、鉄道の旅を続けています。今夜もmoonligh-expressが発車の時間を迎えます。

「東日本大震災・原子力災害伝承館」、これは福島だけの問題ではない

2020年10月03日 | 旅行記・まち歩き
さて今回の東北復興支援と旅は、被災地である太平洋沿岸各地にある東日本団震災の脅威を後世に伝えるために設置された伝承施設を巡ることとして入念な計画を立てた。
国土交通省(震災伝承ネットワーク協議会)の調べでは、青森から福島の4県で、3.11以前から設置されているものも含めると239件(施設)あって、震災後10年を迎えようとしているいま、増加傾向にあるという。
今回は、福島・宮城・岩手の3県の代表的な施設を訪問したのでご紹介したい。



最初は福島県。先月20日にオープンしたばかりの「東日本大震災・原子力災害伝承館」。海岸にほど近い復興計画ゾーンの中にある広大な敷地に、真新しい近代的な建造物が、福島県が設置したもの。ここのオープンの情報に触れたため今回の旅を思い立った。

JR常磐線の二葉駅からは約2キロ。歩けば30分ほどかかる場所だが、駅前にシェアサイクルがあって無料(デポジット制)で利用できる。場合によってはタクシーも止まっていることもあるらしいが、交流センター案内の方に教えていただき助かった。
双葉町は、駅前を中心に特定復興再生拠点区域に認定されているものの、帰宅困難区域には違いなく、人気のない街並みを抜けると、ダンプカーや建設用重機だけが音を立てながら動いているのが印象的な広い場所に出る。その奥の方に見えるのが今回目指す伝習館だとすぐにわかる。



施設内に入ると、各展示室に入る前の導入部とっして、円形のシアター(写真下)に案内され、震災前の様子や地震・津波の状況、そして原子力発電所の事故や住民の避難などの経緯をまとめた10分ほどの映像を見ることになる。
何が起こって、何を目指すべきかをしっかり考えるための時間を共有することは大事ですからね。シアターから螺旋状に上がっていく通路にも、これまでの歴史や地震発生当初からの対応について紹介する展示がある。

その後、福島第一原子力発電所の事故直後の対応、県民の思い、長期化する原子力災害の影響、復興への挑戦という各コーナーでの展示室を回りながら、教訓とするとともに、未来について考えることのできる構成となっている。
最初のシアターの映像を見た後、らせん通路を通って、時系列に各コーナーが設置されているのは理解がしやすい展示になっている。
(展示室内は撮影禁止のため、外観やエントランス、周りの状況等の写真だけになってしまうことをお許しいただきたい。)



展示物を見ての印象とすると、まだまだ復興に時間がかかるということ。既に10年経過しているものの、これから原子炉の核燃料を取り出すことや解体すること、そしてそれをどのように処分していくかということは、私が生きている間には解決できないことである。
くしくもこの施設を訪れた日に、この原子力災害における国を相手取った裁判で、国の責任も東京電力と同等であるとの2審判決が下った。宮城や岩手にはない震災後の課題を抱えるの福島県。福島県民や双葉町・大熊町の町民だけが考えるのではなく、国や国民が一緒に考えていかなければならない。未来のために…そんな思いにさせられた今回の訪問だった。
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