行き先不明人の時刻表2

何も考えずに、でも何かを求めて、鉄道の旅を続けています。今夜もmoonligh-expressが発車の時間を迎えます。

六十里を超えると、破間川流域にも貴重なダムがありました!

2022年10月09日 | 土木構造物・土木遺産
川合継之助が詠んだ「八十里 腰抜け武士が 越す峠」の八十里越は、現在国道289号として新潟県三条市と福島県只見町を結ぶため、県境付近の工事は進められているが、まだクルマ社会に浸った者を寄せ付けない状況にある。
私はこれまで紹介してきたとおり、只見川や只見線を追いかけて奥会津を上流部に向かって何回かアタックしてきたが、最終目的の只見町や田子倉ダムまで行きついたので、最後に只見線と並行して走る国道252号で峠を越えて新潟に戻ることになる。
こちらは「六十里越」という、これまたな難所。細い道、ヘアピンカーブが続き、待ち時間5分以上の片側交互通行などの箇所がある。それでも、ここを越す理由は、新潟県側の破間川水系のダム・発電所もせっかくなので見ておきたいと思ったからだ。



先に触れたとおり、豊富な只見川の水源を分流・分水によって新潟側に引き込み、かんがい用水として利用するという計画により建設されたのが「黒又川第一ダム」だ(写真上)。只見川上流部と同じく電源開発(J-POWER)の施設である(魚野川流域の発電用水利権はJ-POWER)。
後になって、この奥に第二ダムが設置されるが、豊富な貯水量が確保されることが分かったため分水計画は棚上げになる。ただJ-POWERは第一ダム・第二ダムでの揚水発電(途中で中止)など、ここでも積極的な電源開発を行っている。極寒の豪雪地帯であるが、積雪量が水力発電に必要な水量を確保してくれますからね。
「破間川ダム」は治水を目的に新潟県が設置したもの(1986年竣工、写真上)。このダムの水を利用してJ-POWERは破間川発電所を設置。ダムのすぐ下流から取水して末沢発電所へ、そしてその水をひと山越して黒又川第一ダムへと引き込んでいる。なかなか手の込んでいる仕掛けだ。



黒又川を遡っている時に、小さいダムを見つけた。東北電力が管理・運営する「黒又ダム」だ(戦前に設置されたダムで、下流にある「藪上ダム」とともに東北電力、写真上)。ここで取水した水を導水路方式でひと山越して上条発電所に送る(写真下)。重力式コンクリートダムで、堤高24.5メートル、堤頂長228メートルと小ぶりな堤体だ。
玉石張りのダムは県内ではここだけ。実は竣工年が1926年(大正15年)で、信濃川水系ではこのダムが最も古いダムで、土木学会の日本の近代土木遺産で現存する重要な土木構造物に認定されている。選奨土木遺産入りの候補でもある。
こ黒又ダム、放流は越水式なのだが(洪水吐のローラーゲート一門)、緩やかな曲線を描く堤体を流れる水は美しいらしい。(雪解けの春先に見られるらしいが、私の訪問時には流れていなかった。)奥沢水源地の「水すだれ」みたいなんでしょうかね!ぜひ春先に再訪したいものだ。






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