

周辺の谷に無数に設置された堰堤等をはじめとした常願寺川上流の「立山カルデラ」内の砂防施設。前回説明したように、県営の砂防施設で古いものもあるものの、国直轄の第一号でもある白岩堰堤は古株であるだけでなく、実に重要な場所に築かれており、現在においても機能していることが凄い(写真上:白岩堰堤の上部からと左岸から右岸の山肌を見る。再掲)。
その白岩堰堤はカルデラの中でも常願寺川の上流で最大の難関支流「湯川」にあって、丁度カルデラの出口の狭さく部分に位置する。カルデラ内に降る雨や雪解け水、そして一緒に流れ出る土砂を一手に引き受けて、上流や下流の砂防施設を守るという役目も負っている。
しかし、その白岩堰堤ですらもろく堆積した土砂の上に成り立っているほか、堰堤の右岸側の岩盤は崩壊を繰り返すことたびたび。また弱点と言われている左岸側の盛土の沈下、内部に水が溜まっていることから地すべりを起こしかねないという。


そこで、数々の対策が施されることになるのだが、戦後の時代は第三から第七堰堤の施工や何回となく洪水の被害にあったか所の補修・補強に追われることになるのだが、本体そのものの老朽化だけでなく、やはり周りの地盤などが大きな課題となる。
右岸には、水谷平へつながる人やクルマが通れる狭いトンネル(写真上)のほかに、白岩堰堤の脇の岩盤に沿って立派なトンネルが掘られている(写真上のもう一枚の右端)。このトンネル内部からは外の岩盤に向かって線状のアンカーボルトが取り付けられ岩盤そのものを引っ張り崩落を避けるという工事が施されている。
また左岸の盛土の下には、水路を張り巡らして堰堤上に掘った集水井2本に送り込むとともに、たまった水を地下水路を経由して渓流に流しているという。ここ常願寺川の砂防対策は、単に地表で起こる自然現象や表流水・河床だけの戦いではないのである。


これらの工法は、右岸トンネル内からのアンカーボルトが平成11年(1999年)から、左岸の地下排水路や集水井の設置が平成19年(2007年)から施工されており、比較的新しい。(写真上:これらの工法を開設する博物館パネルと「暴れ川と生きる~常願寺川治水叢書【砂防編】」から資料。)
立山カルデラ砂防博物館の展示パネルでは、単に「新しい種類の工法」とだけ紹介されているが、どれほど凄いものなのかは自分の知識の中では理解できていない。山を内部から引っ張堤るなんて、めちゃくちゃ凄いこと考えるなと思っているのだけれどもー。
めちゃくちゃ山の中に潜入して、とにかくすごい砂防施設を見せてもらい、これまた常願寺川は流路延長は50数キロと短いものの、見ようとしなければ見えないところ、見ようとしても見れないところにも見所がぎっしり詰まっている川であることを知らされた。(写真下:立山カルデラ砂防博物館内では、白岩堰堤付近のトンネル内からの補強の仕組みを模型で説明している。)

