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奥会津「柳津西山地熱発電所」の熱で可能性を感じる

2024年09月24日 | 土木構造物・土木遺産


ダムを見に行くわけでもないのに、今回もまた山の中を走っている。これまでも奥会津地方には何回か訪れ、只見川の電源開発に関連施設を求めて行き来してきたが、今回は少し山の中に入ることになった。今回の目的地はダム式の水力発電所ではなく、地熱発電所である。
走り慣れた国道252号から少し県道を入り、柳津町と三島町の境界を何回かまたぐ道のりは10キロ弱。西山温泉を通り過ぎて寂しい山の中ではあるが、道路は完全に舗装されておりくねった道を進んだところに突如大きな建物が現れる。東北電力の「柳津西山地熱発電所」である(管理は「奥会津地熱」、熱源供給会社)。
地熱発電は、地中深く地熱によって暖められた蒸気を利用しタービンを回す発電方式で、二酸化炭素の発生は火力にと比べてはるかに少なく、再生可能エネルギーとして注目を集めている。ダムばかり追いかけ、揚水発電の蓄電装置やコストなどの課題にぶち当たり、他の発電方式にも触れておこうと調べてみると、新潟からも日帰りのできる場所に、しかも白洲次郎氏が日本の発電事業のため力を注いだこの地に地熱発電所があることを知り出かけてみた。
(写真下:柳津西山地熱発電所の本館(発電所)と冷却塔)



この発電所では、最大出力3万kW(キロワット)の発電を行っているが、以前は6万5千kWで一つのユニット(タービンを回すまでの一連の設備セット)では日本で最大の地熱発電所を誇っていたという。完成が1995年(平成7年)ということで、運転開始から20年経過し、蒸気量が減少し効率化を求めてタービンの更新をしたため計画出力の変更に至ったそうだ。
確かにこの発電の運用は低迷していた時期があった。火力発電用の燃料が安かったことが大きな要因であるが、最近の化石燃料の高騰や価格不安定、輸入に頼らざるを得ない状況に加え、災害事故のリスク回避やクリーンエネルギーの活用などが叫ばれてきたことにより、再び熱を上げているようである。
再生可能エネルギーの中でも風力や太陽光は自然の力を利用するが、水力と同様に天候にも左右される。その点、無限ともいえる地熱エネルギーは安定性は抜群で、発電施設も更新を続ければ長寿命化が図れる。そして、何と言っても純国産という点で今後無限の可能性があるというところであろうか?
(写真下:発電所に続く道路脇に見ることができる蒸気パイプ(送水用か還元用かは不明)と2017年まで使用されたタービン(実物))



地熱発電は、地下深くマグマ溜まりの上層から蒸気を汲み上げる。柳津西山の場合も、複数の掘削井を地下1,500~2,600メートルへ折れ曲がるように掘られている。地中深いことから高度の技術必要であり、開発にかかる時間や経費は掛かる。綿密な調査と的確な掘削が採算のカギを握る。ただ、日本を含む火山帯の多い太平洋沿岸や構造帯付近はその可能性が大きいという。
発電所にの近くには大概温泉がある。温泉への影響は全くないとは言えないが、地底のキャップロック(帽岩=ぼうがん)の存在により地熱貯留層のほうが深い場所にある。むしろ、国内では山の中とはいえ自然公園内に設置されているものが多く、自然環境への影響や景観上を問題、火山性ガスの排出を指摘する声もあるとか。
ただ、柳津西山では発電所建設のための森林伐採は最小限にとどめているし、発電に使用した熱水や冷却水は再び地中に還元している(他の地熱発電所でも同様)ことや、地中から噴出する硫化水素等を改修する設備を設置し肥料などに利用している。他の地域では地下還元熱水を利用したハウス栽培などの例もある。環境への配慮、地域への社会貢献という面でも魅力が多いと感じた奥会津での柳津西山地熱発電所との出会いであった。
(写真下:発電所に併設されている「PR館」と掘削井を示した模型の展示物)


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