今回は富岩運河そのものを紹介しよう。前回触れたとおり富岩運河は昭和初期に赤司貫一の計画立案による都市計画の一環として誕生した。一時は海運の利用頻度も下がりヘドロ化するという場面もあったが、現在も工事進行形の「とやま都市MIRAI地区」事業として見事に復活を遂げた。
かつての船溜まりであった環水公園を起点として、岩瀬浜までの延長約5キロの運河だが、両岸には遊歩道や休憩スペースなども完備されジョギング・散歩コースとして利用する市民も多いが、観光であれば「富岩水上ライン」に乗船することをお勧めしたい。もちろん私も乗船しました!
クルーズ船は2009年の運航開始、富山県と富山市から委託を受けて「富岩船舶」が運航しており、この夏、総乗船客数が60万人に達した。前回述べたとおり環水公園も見どころが多いが、富岩運河クルーズでは土木遺産や文化財が乗船しながら存分に楽しめる。
私が乗り込んだのは最新鋭の「kansui(かんすい)」。環水公園にふさわしく、とてもスタイリッシュな形をしている。全長18メートル、定員55名、後部はオープン席となっており(写真上)、川風?運河風を浴びながらのクルーズが楽しめる。
いくつか運航コースがあるが、私は運河の全容を見るべく終点の岩瀬カナル会館浜まで行く便に乗船。70分、1700円(復路・路面電車乗車券付き)。これが富岩運河の見どころ満載でクルーズで、乗船するガイドさんがタイムリーに注目ポイントを解説してくれる。最大の見せ場は、乗船したまま「中島閘門(こうもん、写真下)」に突入すること。
以前、東京の扇橋閘門、石巻の石井閘門を紹介したことがあるが、富岩運河の中島閘門はクルーズ船がそのまま閘室に入って、上流と下流の水位差を人工的に調整する水のエレベーターを体験できる日本で唯一の閘門クルーズになっている(他に中島黄門の操作室の見学するコースなどもある。)。
中島閘門は、富岩運河開削とともに建設され、1934年(昭和9年)に完成。パナマ運河方式の前後の扉を閉めて水位を調整する方式(複扉室(ふくひしつ)閘門)で、10分少々で水を出し入れできる。昭和の土木構造物としては初めて国の重要文化財に指定されている。
そのほかにも、「むくり護岸(曲面護岸、写真下)」は上部を曲面にすることで材木を転がすようにして積み下ろしできるようにしたもの、こちらも国の重要文化財。年代物のゲルバー橋の「永代橋(1938年完成、写真下)」とともに中島閘門の近くにあって、クルーズ船から至近で見ることができる。年代物のゲルバー橋が真下から見れる!
また、クルーズ船の終点でもある岩瀬地区(終点の岩瀬カナル会館から、岩瀬運河を渡ってすぐ)には、「北前船廻船問屋・森家(国重要文化財)」、「馬場家(登録有形文化財)」などをはじめ、岩瀬の古い街並みを散策することも可能である。とても魅力的な富岩水上ライン、環水公園とともにぜひ一度ご堪能いただきたい。桜の時期がいいかも!
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