消費増税では財政再建できない -「国債破綻」回避へのシナリオ | |
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ダイヤモンド社 |
一橋大学名誉教授野口悠紀雄先生の著書である。野口先生の著書は二冊目だ。専門的で結構難しい。
目次を列挙すると、国債消化はいつ行き詰まるか、対外資産を売却して復興財源を賄うべきだった、歳出の見直しをどう進めるか、社会保障の見直しこそ最重要、経済停滞の原因は人口減少ではない、高齢化がマクロ経済に与えた影響、介護は日本を支える産業になり得るか。
数字やシミュレーション結果などがふんだんに盛り込まれており、まっとうな話が多い。ただ、手軽な読み物とは言えない。
この中で一つ発見したことがある。年金と医療・介護の違いだ。どちらも社会保障なんだが、だいぶ違う。年金は所得移転だから、もらっても使うかどうか分からない。結構貯金になってしまう。経済的にはこれではいけない。一方、医療・介護は、必ず使う。というか、使った分だけもらえるから。これを有効需要といい、経済を活性化する。
自動車は、「売れると内需が増えて望ましい」と皆がいう。一方、同じ有効需要なんだが、医療・介護は、「抑制すべき」となる。なぜか。
供給主体と費用負担が異なっているためだ。自動車の供給主体は自動車メーカーである民間企業なので、その立場からの声が強く、支出を増やすべき、となる。医療・介護は、供給主体の声が小さい。費用負担も公的保険であるから大半が保険者であり、保険者が支出を抑制せよ、と言う。
医療も介護も内需で、需要が多いんだから、公的保険でカバーできる範囲を小さくすると、有望な新分野となり、日本をけん引する産業に育つ。医療や介護は規制を緩和すべき。
デフレの世の中だ。デフレとは供給が多く、需要が少ないこと。しかし、そうではない分野が3つある。超過需要となっている医療と介護、そして東北地方の建設業だ。建設業は別にして、もっと民営化すれば労働移動も進み、失業も減るだろうにね。