今晩は、才村です。
現在、オフィス賃貸業は巨大新築ビルの大量開業という「2012年問題」で厳冬期を迎えています。そこで各社はこの苦境をどう乗り越えようとしているのか、5年前(2006年)は市況をどう見ていたのかという視点で、今回はN社とK社の戦略を取り上げました。ただし、記載内容は、私が興味を持った点です。出典は、各社決算説明資料です。
まず、外部成長戦略です。
N社(11年12月期)優良物件への積極投資、バランスのとれた質の高いポートフォリオの構築
K社(11年10月期)「東京経済圏の中規模オフィス中心の投資」継続
(具体策:NOI(減価償却費控除前事業利益)利回りの高い複数一括案件取得)
N社(06年12月期)優良物件への厳選投資による成長基盤の確保
K社(06年10月期)「東京経済圏の中規模オフィス中心の投資」への変更(住宅投資は行わない。)
(理由:人口増加・地価上昇、中規模オフィスは顧客が多い、賃料上昇局面では賃料水準の引き上げ可能)
⇒両社とも収益性の高い優良物件への選別投資を戦略としています。
K社は、5年前にCF向上を狙い中規模オフィスへの重点投資方針に変更しましたが、総資本経常利益率は1.33%から1.11%に、分配金は13,529円から9,596円に低下しています。2007年ごろからの金融危機と経済情勢悪化によって、オフィス賃借料節減のため移転する企業が増え、中規模オフィスへの「選択と集中」の投資戦略が外れてしまいました。もっとも、業界第1位の資産規模を持つN社も総資本経常利益率は1.54%から1.07%に、分配金は19,224円から15,200円に低下していますので、オフィス賃貸業界自体の環境が厳しかったといえます。他の大リートに吸収された中小リートもあった中で、K社は生き残るために、資産の担保差し入れ、大商社による出資受け入れの方策を取って凌いできました。
オフィス賃貸業の特性 (1)業績が景気に左右される。(2)リニューアルが容易である。
住宅賃貸業の特性 (1)顧客分散により業績が安定している。(2)資産劣化しやすい。
ドメイン変更に当たり、(1)好調なオフィス市場、(2)オフィス資産を多く持っている親会社、という機会と強みを考慮すれば、妥当な選択だったと推測できます。
次に、内部成長戦略です。
N社(11年12月期)戦略的リニューアル投資(省エネ化・バリューアップによるテナントCS向上)
(市場認識:稼働率は底打ち、賃料は底値圏を推移)
K社(11年10月期)概況説明だけ
(補足説明:新規賃料はすべて減額、継続賃料も-4.2%)
(昨夏の節電対応:空調の設定温度変更、専有部分の管球類間引き)
(環境対応として、日本政策投資銀行Green Building認証取得、GRESB(持続可能性評価ベンチマーク)への参加)
N社(06年12月期)既存テナントの賃料上昇
K社(06年10月期)新規賃料・継続賃料の引き上げ
⇒5年前に賃料引き上げを行っていたのが信じられないくらい、厳しい経済環境と新規オフィス供給量増大により、全般的に稼働率と賃料が下がっています。
両社ともテナント満足度向上に知恵を絞っていますが、5年前になかった施策としては、高効率空調・個別空調やLED照明・人感センサーによるコスト削減が挙げられます。K社は、テナントアンケートを踏まえた修繕実施に熱心ですし、環境や社会性への取り組みに積極的な点が好感を持てます。
現在、オフィス賃貸業は巨大新築ビルの大量開業という「2012年問題」で厳冬期を迎えています。そこで各社はこの苦境をどう乗り越えようとしているのか、5年前(2006年)は市況をどう見ていたのかという視点で、今回はN社とK社の戦略を取り上げました。ただし、記載内容は、私が興味を持った点です。出典は、各社決算説明資料です。
まず、外部成長戦略です。
N社(11年12月期)優良物件への積極投資、バランスのとれた質の高いポートフォリオの構築
K社(11年10月期)「東京経済圏の中規模オフィス中心の投資」継続
(具体策:NOI(減価償却費控除前事業利益)利回りの高い複数一括案件取得)
N社(06年12月期)優良物件への厳選投資による成長基盤の確保
K社(06年10月期)「東京経済圏の中規模オフィス中心の投資」への変更(住宅投資は行わない。)
(理由:人口増加・地価上昇、中規模オフィスは顧客が多い、賃料上昇局面では賃料水準の引き上げ可能)
⇒両社とも収益性の高い優良物件への選別投資を戦略としています。
K社は、5年前にCF向上を狙い中規模オフィスへの重点投資方針に変更しましたが、総資本経常利益率は1.33%から1.11%に、分配金は13,529円から9,596円に低下しています。2007年ごろからの金融危機と経済情勢悪化によって、オフィス賃借料節減のため移転する企業が増え、中規模オフィスへの「選択と集中」の投資戦略が外れてしまいました。もっとも、業界第1位の資産規模を持つN社も総資本経常利益率は1.54%から1.07%に、分配金は19,224円から15,200円に低下していますので、オフィス賃貸業界自体の環境が厳しかったといえます。他の大リートに吸収された中小リートもあった中で、K社は生き残るために、資産の担保差し入れ、大商社による出資受け入れの方策を取って凌いできました。
オフィス賃貸業の特性 (1)業績が景気に左右される。(2)リニューアルが容易である。
住宅賃貸業の特性 (1)顧客分散により業績が安定している。(2)資産劣化しやすい。
ドメイン変更に当たり、(1)好調なオフィス市場、(2)オフィス資産を多く持っている親会社、という機会と強みを考慮すれば、妥当な選択だったと推測できます。
次に、内部成長戦略です。
N社(11年12月期)戦略的リニューアル投資(省エネ化・バリューアップによるテナントCS向上)
(市場認識:稼働率は底打ち、賃料は底値圏を推移)
K社(11年10月期)概況説明だけ
(補足説明:新規賃料はすべて減額、継続賃料も-4.2%)
(昨夏の節電対応:空調の設定温度変更、専有部分の管球類間引き)
(環境対応として、日本政策投資銀行Green Building認証取得、GRESB(持続可能性評価ベンチマーク)への参加)
N社(06年12月期)既存テナントの賃料上昇
K社(06年10月期)新規賃料・継続賃料の引き上げ
⇒5年前に賃料引き上げを行っていたのが信じられないくらい、厳しい経済環境と新規オフィス供給量増大により、全般的に稼働率と賃料が下がっています。
両社ともテナント満足度向上に知恵を絞っていますが、5年前になかった施策としては、高効率空調・個別空調やLED照明・人感センサーによるコスト削減が挙げられます。K社は、テナントアンケートを踏まえた修繕実施に熱心ですし、環境や社会性への取り組みに積極的な点が好感を持てます。