あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

鎌倉文学館の「リスペクト好き好き大好き展」を眺めながら芥川賞とノーベル賞について思へる

2017-11-12 10:43:35 | Weblog


蝶人物見遊山記 第260回 &鎌倉ちょっと不思議な物語第393回


最近はどこの展覧会の客も、棺桶に片足を踏み入れかけた高齢者ばかりなので、企画やタイトルに一工夫して若年層を狙っているようですが、「リスペクト好き好き大好き」とは恐れ入谷の鬼子母神。

芥川龍之介が夏目漱石、三島由紀夫が川端康成を「リスペクト」していたという師事私淑尊敬敬愛関係を軸にした文学者相関関係をテーマにしているのですが、結果的には「タイトル一読意味不分明」で、老若男女すべてがあまりレスペクトできない展覧会になってしまったようです。

わたくし的には太宰治が芥川をリスペクトしていたというのはちょっと盲点を突かれた感じで、作風があれほど異なるのに、また、どちらかといえば文学的な優位性は太宰に軍配が上がるのに、どうして太宰が芥川に憧れていたのかさっぱり分かりませんでした。

おそらくチャイコフスキーがモザールに憧れていたようなものなのでしょうが、だからこそ芥川賞をあれほど欲しかったのですね。川端などの審査員が気前よく太宰に呉れてやっていれば、おそらく芥川に倣って若死になんかしないで、芥川、川端はおろかな夏目、谷崎をしのぐ本邦随一の大作家になって、川端の代わりにノーベル賞をもらってゐたのではないでしょうか。

考えてみれば太宰の小説って、村上春樹のそれを完全に先取りしていたような気がするのですね。ま、あくまでもわたくし的な思い付きですが。

余談ながら川端康成の不幸は、生きていれば当然谷崎に与えられたはずのノーベル賞を代わりに頂戴してしまったことで、その重みに打ちのめされて書けなくなった川端は、気の毒なことに逗子マリーナで自決のやむなきに至ったのでした。

なお本展は、来る12月10まで秋薔薇香る同館にて開催中ずら。


  N響を解説者みな褒め上げるなんでも「マイウー」のタレントと同じ 蝶人

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする