照る日曇る日第1008回
12年1月から14年12月までの350首を収めた第9歌集
ある個所は岡井隆風またある個所は寺山修司されどまぎなく加藤風の最新歌集
ある時は修正アララギまたある時は柔軟口語さすがは「ニューウェーブ短歌」の元祖なり
90年代は遥に遠くニューウェーブ10年代には新古典となる
ニューウェーブの後には新波来て大波小波超ニューウェーブ来襲
ヌーヴェルヴァーグ去りニューウェーブも去りて海は凪ぎ大航海者尽く死滅す
むらぎものこころに響く低音は全首を貫く孤独と不安
伝統を変革する者の常として最新変革者共と戦わねばならぬ
14年1月28日尊父死しその日より始まる父との対話
ちちのみの父死しここだも歌生まる父子を嘉して賦活する歌
フィクションで父の死詠みし者ありき あれらはただのフィクションだった
在りし日の父上偲びて歌生まる末尾の晩歌本書の白眉
父看取り父を喪い父想う末尾の詠草茂吉の響き
茂吉より心に沁みる挽歌あり父の死すでに虚構にあらず
ポップとは命を賭したサーカスよジャンプできねばピエロとなるのみ
たそがれの夕べを迎えおもむろに歌人はおのれの晩歌を呟く
三十年歌い続けてきたのだからたまには喉腫れ咳も出るだろう
教科書に加藤治郎(一九五九~)と記されて没年はまだ夏雲のなか 加藤治郎
三十年歌い続けてきたとしても明日も新たな歌うたうべし 蝶人