蝶人物見遊山記 第261回
三〇分待ちて平成館に入りけり興福寺中金堂再建記念運慶展
運慶は平安末期から鎌倉を代表する本邦第一の仏師とか
運慶の父康慶が鮮やかに彫琢したる四天王像
運慶が造りし二体の毘沙門天 時政の願成就院、義盛の浄楽寺に
運慶の毘沙門天に踏まれたる二匹の邪鬼は大仰に反る
天の邪鬼ゆえ楽しくもあるか運慶の毘沙門天に踏みつけられて
踏む者はアーリア人にして踏まれるはドラヴィタ人とする説もあり
執著を無きものにしたバラモンの無著菩薩の尊顔拝す
中国に寒山拾得インドに無著世親超俗の悟り開きたり
興福寺四天王像の多聞天ミケランジェロのダヴィデと張り合う
快慶は運慶の弟にあらずして運慶の弟弟子なり
堪慶が明恵上人に刻みたる子犬愛らしムクによく似て
亡き父の疾風怒濤を懐かしむ堪慶康弁の寂しき洗練
運慶をちょっぴり馬鹿にしていたが古今無双の彫刻家なりき 蝶人