ある晴れた日に 第576回
雨降れどナガサキアゲハは柑橘の葉にぶら下り一粒の卵産む
8月の3日の朝に蝉がいう人みな無為に過ごすべからず
「この女優さんは8×10でビシッと撮りましょ」と篠山紀信氏のたまう
エンゼルスは泥沼7連敗なれど大谷の2塁打のみ大きく報じる
押せばすぐ青に変わる信号は歩行者にはいいが車は迷惑
そういえば昔は何にでも掛けていた今でもあるのか味の素
今日の次に明日という日が来ることをみんな勝手に信じているなり
琉球よヤマトンチームを打ち破れプロバスケットの準決勝で
この夕べ不如帰鳴くを待ちおれば嫉み妬んで騒ぐ眉画鳥
この頃はさっき浮かんだ歌の葉をしばらくするとさっぱり忘れる
大震災も8年目となれば冷たくて国も人も助けてはくれない
わが息子障害者なれど恐らくは障害者とは思っておるまい
売れぬ絵をたんと描いてもそれでよし生きてしあればそれでよろしい
妹も池江璃花子も負けるなよ夏の終わりの抗がん闘争
長すぎるエンドクレジットの只中で突然始まる別の音楽
敵なるか味方なるかと窺いつつ惑いつつ我を見据えるアオダイショウの眼
犯人も犯人でないわたくしも追っているのよ監視カメラは
横浜で博打場を開きたい女賭博師のよからぬたくらみ
風雪に耐えて嵐を呼ぶ男都知事選にて大爆発か
一命をマッカーサーに救われて「再軍備せよ」と抜かす天皇
天皇の戦争責任について誰一人触れぬ8.15
モノなどを考えること自体が面倒で考えたふりして「どちらともいえない」
トルストイの本の名前と覚えしが「戦争と平和」は今のことなり
殺されず殺しもせずに戦から戻ってくるのは奇跡に近い
表現の自由を守るっちゅうことは命を賭けんと出来へんちゅうこと
西瓜ほどおいしい果物はないいずれは君にも分かるでしょう
8月の終わりの日に思い出すサトウハチローの「その日は8月31日」
文月尽と詠めばそのとき文月尽く
つくつくと法師鳴くなり母悼み
猛き者ますます武張る葉月哉

活活とクマゼミ鳴きて葉月尽