照る日曇る日 第1296回
欲情に任せて女三の宮を強姦した柏木だったが、その鬼神も恐れぬその大胆な行為は、かつて自身もそれ以上の姦通を犯した経験のある源氏に知られることとなり、源氏と違ってそのストレスに耐えられなかった柏木は自死自滅するがごとく他界していく。
(柏木亡きあと未亡人の落葉宮に迫る夕霧の優柔不断さは、死んだ柏木の直情径行と鋭い対比をなして、なんと鮮やかに描き分けられていることよ!)
貴人の資産と結婚に目がくらんだ源氏は天罰覿面、因果応報、正夫人の地位を失った紫上の愛を失い、もはや忘れたはずの許されざる己の過去から強烈な復讐をこうむり、さながらヘッツェルを失ったウイーンフィルのように、公私ともに権力の絶頂から転落していく。
紫上が亡くなったあとの源氏の悲嘆を「御法」、「幻」で描く紫式部の筆は冴えわたり、文字通りそうであるほかは無かった光源氏という男の運命に、涙ながらに「寄り添って」いるのである。
懇切丁寧な語釈と注解に助けられながら読む源氏こそは紫式部の筆跡をじかに辿る原作の読みであり、いかなる翻訳でも味わえない源氏の醍醍味といえよう。
孫自慢、犬猫自慢、癌治療「徹子の部屋」の三大テーマ 蝶人