あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

フルトヴェングラー・オペラライヴ集CD全41枚組を聞いて 

2019-09-11 22:08:34 | Weblog


音楽千夜一夜 第433回



夏のはじめから終りまでフルヴェンのオペラをずっと聞いていたが、もはや昔のような感激とか感動はなく、はたして聞いて良かったのか良くなかったのか、と考え込んだりしている。

以前あれほど感激したバイロイト音楽祭の「フィガロの結婚」や「ドン・ジョヴァンニ」で、スザンナやツェルニーナを歌っているイルムガルト・ゼーフリートは、時々高音部の音程をはずしてしまい、よせばよいのに必死で吊り上げようとする。フルトヴェングラーがよく平気で歌わせていたものだ。

それはともかく、このコレクションの柱は、もちろん1950年3月、ミラノ・スカラ座のオケを駆使してフラグスタートなどの名歌手をフューチャーしたワグナーの「指輪」であるが、これがいまいち、いまに、という出来栄えざんす。

序夜の「ラインの黄金」のダルな立ち上がりを引きづりつつも、さすがフルヴェン、「ワルキューレー」「ジークフリート」と日を追うごとに「らしさ」を加え、第3日の「神々の黄昏」では、轟々と地軸を揺るがす音楽が鳴りわたりはするのであるが、全体的にはむしろ3年後のローマ放響とのライヴの方が、フルヴェン・オーラ満載で軍配が上がる。

その遺憾を知るがゆえに、リベンジを図った老マエストロは、ミラノの仇をローマで晴らし、その翌年に死んだ。


 ソプラノの名歌手が外した最高音我らの耳はいたく傷つく 蝶人
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