照る日曇る日 第1297回
全3巻あるのだが、都合で2巻目から読み始める。1巻目「台頭篇」では大革命の20年前にコルシカ島で生まれたナポレオンが、軍人として革命的に大活躍し、イタリア、オーストラリアに連戦連勝するまでを描く。
この「野望篇」では、パリに凱旋したナポレオンが、英国艦隊との直接対決を避けて突如エジプトに侵入。帰国するやブリュメール18日のクーデターで共和国執政に就任して独裁体制を強めていき、今度はアルプスを越えてイタリアを占領し仏伊両国の首領となる。
1804年にはフランス皇帝、翌年にはイタリア王となり、同年12月アウステルリッツの3帝対決でオーストリア、ロシア連合軍を大敗させ権力の絶頂期を迎えたが、身内の兄弟たちを各国の王としてデリバリーし始めた辺りから、大いなる転落の日々が始まるのである。
私は著者による「小説フランス革命全12巻」を読んで、はじめて大革命の実相を会得したと思ったのだが、この人はアンドレ・モロワやミシュレーよりも面白く明快に歴史を開陳できる稀有な才能の持ち主で、「ナポレオン」はその大著のいわば続編にあたるが、その独特の語り口と漫画的な切り口が前著より気になるといえば気になるのである。
耕君のイビキで揺れる六畳間 蝶人