あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

島田雅彦著「君が異端だった頃」を読んで 改訂版

2019-09-04 20:21:48 | Weblog


照る日曇る日 第1290回




念願の童貞喪失から絶世の美女妻vsブロンド娘との断崖絶壁三角関係まで、驚くべきプライバシー暴露相次ぐ、文壇ピカイチの秀才イケメンによる半生記ずら。

驚異的な記憶力を駆動してこの世に生まれおちてから1992年の「彼岸先生」刊行当時くらいまでの「詩と真実」のあれやこれやを、時系列を追って嘘偽りなく書きつらねた私小説、この人世にしてこの作家あり、である。

「私小説はウソツキが正直者になれるほとんど唯一のジャンルであり、私を主語にするのがテレ臭いので、「君」を語り手にした」、と作者は解説するが、それにしてもよくも思い切ったもの。

おかげで我らは作家のプライバシー覗きと小説よりも感動的な青春譜、いわゆるひとつの人世物語のドラマツルギーを、ふたつながら一挙に楽しむことができるのである。

蛇足ながら、わざわざ奥付に「本書はフィクションです」と付記する必要はなかったのではないだろうか。

  
激痛で2夜寝られぬ妻の眼の痛みよ去れと我も祈りき 蝶人

コメント
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