あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

渡辺清著「戦艦武蔵のさいご」を読んで

2021-02-14 13:03:00 | Weblog

照る日曇る日 第1541回

「爆弾は上甲板をぶち抜いて爆発したからたまらない。30人近くの主計兵たちは一瞬にして誰かれの区別なくぐしゃぐしゃにつぶされてしまった。ふっとんだ首、くだかれた頭蓋骨、どろどろの脳液、ひものようにもつれた腸わた…。むろん床は血でいっぱいだ」

1944年10月18日、レイテ決戦の「捷一号作戦」に参加し、超ド級戦艦武蔵に乗って、群がる敵機に向かって機銃を撃って撃って撃ちまくった挙げ句、シブヤン海深く撃沈された17歳海軍志願兵の貴重な体験記である。

「「うおー、うお、うおー」喉を引き裂くような荒々しい喚き声、その膝からは栓をひねったように血がはじいている。
「森下、おい、しっかりするんだ」。ぼくは駆けよって両方のももに止血棒を巻きにかかった。」

2300名の乗員のうち艦長以下大半の兵士が海没した中で、奇跡的に九死に一生を得た作者は、武蔵の最後の戦いと戦友たちの凄絶極まりない最期を詳細に描いて、戦争の悲惨さと軍部の無謀横暴をあばき出している。

 イソヒヨドリに口笛を吹くが知らん顔綺麗な声をきかせておくれよ 蝶人
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