照る日曇る日 第1545回
オケのメンバーだった人が、このように自分の体験を公にしてくれるのは、クラシック音楽の好きな人間にとっては大歓迎で、N響やこのオケを振った指揮者の多くは、あまり小生の好みではないが、「よくぞ書いてくれた」と、まずは拍手を送りたい。
著者は、1990年の11月から2019年の3月までの30年近くに亘って、N響でオーボエを吹き鳴らしながら数多くの指揮者と交流してきたわけだが、有名無名を問わずそのマエストロの指揮ぶりや音楽のありようについても、頑張って書いてくれているので面白く、双方の人となりまで伝わってきて、「ああ彼はそういう人だったのかあ」と認識を新たにする挿話が、ふんだんにありました。
ヴァーツラフ・ノイマンを皮切りに、サヴァリッシュ、シャルル・デュトワ、小澤征爾、ズビン・メータ、プレヴィン、エッシェンバッハ、サンティ等々、著者が交流したマエストロは枚挙に暇がないが、私の心がずむと動いたのは、尾高忠明、広上淳一、そして今は亡き岩城宏之との思い出に触れた短い記事でしたなあ。
日本のオーボエ奏者かずかずあれど、私が一番高く評価しているのは宮本文昭選手であるが、彼と同様に著者もN響を引退した後は、またしても指揮者を志望しているらしい。
願わくば途中で指揮棒を放り出して完全リタイアしてしまった先輩のようにならず、日本のハインツ・ホリガーを目指して精進してほしいものだ。
ところでああた、なんでN響を去るときに、可愛い後輩の池田昭子しゃんを次期首席に推薦しなかったのかしら。
我を見てギャンギャン吼える阿呆犬よ殺してやるからそこで待ってろ 蝶人