あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

アガサ・クリスティ著・高橋豊訳「動く指」を読んで

2021-02-22 11:08:24 | Weblog

照る日曇る日 第1544回

飛行機事故で負傷した男が、その妹と共に隠棲したロンドン近郊のリムストックで起こる謎の殺人事件。それを解決するのは最後のほうで遅ればせながら登場するご存知マーブルおばさん。けれどもそれまでの95%で大活躍するのは語り手でもあるその男なので、これならマーブルが居なくてももしかすると解決したかもしれない。
最後に捕まったのは思いがけない人物だったが、それは二の次で、この「動く指」の面白さは、犯人探しそのものよりも、このリムストックという小さな町とそこに住む個性豊かな様々な住民のプロフィールにある、と断言できよう。
珍しくクリスティが指を動かしながら夢中になっているのは、いつもの謎解きではなく、英国作家お得意の人物と自然描写そのものである。

 コーナーを左に曲がって一直線ゴールを目指せどテープは見えぬ 蝶人
コメント
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