照る日曇る日 第1542回
久かたぶりにこの人の小説を読んだ。
「失われているもの」という副題が付いている通り、作者が己の過ぎ来しかたを振り返り、死んでいるのか生きているのか分からない昔の女や、懐かしい母親の面影を心中に尋ねる、という案に相違した趣向で、この作者には珍しい私小説風心境小説?である。
これまで社会的現実に立脚してドラマをつぐむことが多かった作者にしては珍しく例外的な作品で、それが貴重なのかもしれないが、私としてはかなり退屈な読み物であった。
おとなりのおにわのおくのブランコがかぜもないのにかすかにゆれる 蝶人