蝶人物見遊山記第346回
生誕100年を記念して昨日まで開催されていた本展。
なんの期待もせずに行ったのだが、思いがけず目の保養になる出しものもあって、それは例えば彼女が二十歳の年に描いた楽しく美しくカラフルな日本画だった。
恥ずかしながら、朝倉摂といえば舞台美術のスペシャリストと思っていたので、最初期は日本画家であったとは、ここで作品を見るまでは全く知らなかったのである。
同年代の少女の群像を大胆な構図で、(後続する後年の抽象的な重苦しい絵画とは180度違って)、なんの苦もなく楽しい絵に仕上げてしまっている。
注目すべきは、彼女が1日1枚描き続けていたという「スケッチ・ブック」で、そのどれをとってもその正確なデッサン力と見事な色彩感覚に感嘆させられるのであるが、特に1951年に佐藤忠良を正面から鉛筆で描いた1枚は素晴らしく、若き日の彫刻家の面影がものの見事にとらえられている。
会場には彼女が長い生涯の最後まで手掛けた舞台美術の貴重な映像記録や模型もあますところなく展示されており、その水を得た魚のごとき活動のエッセンスをうかがい知ることもでいたのだった。
我が民を救うと称して外つ国を攻めるは戦の常套手段 蝶人