あまでうす日記

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主婦の友社版「誰もが泣いて喜ぶ愛と感動の冠婚葬祭その他諸々挨拶&スピーチ実例集No.124」

2022-06-14 19:56:02 | Weblog

主婦の友社版「誰もが泣いて喜ぶ愛と感動の冠婚葬祭その他諸々挨拶&スピーチ実例集No.124」

 

西暦2022年水無月蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話第410回

 

  • 姪の成人式を祝う伯母のスピーチ

陽子ちゃん、成人式おめでとう。お父さん、お母さんもおめでとうございます。*1

 

おばさんはね、普通の姪が成人式を迎えた日の普通のおばさんよりはきょうずっとずっとうれしいんです。何故っていうとね、それはあなたも知ってのとおり、おばさんはあなたの名付け親だからです。*2

 

あなたのお母さんはね、長女であるあなたが誕生した時、会社の仕事を続けようか、それとも専業主婦にしようかといろいろ悩んでいました。躁鬱症じゃあないんだけど、そういうことって誰にもあるでしょう。

 

ふだんはとっても元気な人なのに、すっかり落ち込んでいたのよ。せっかくあなたがこの世に登場しようと意気込んでいたのに失礼しちゃうわね。それでやっとあなたが生まれて、さてどんな名前にしようかという段になってもやれ四柱推命がどうだの字画がどうだのって、いつまでたっても夫婦でぐちゃぐちゃいってたの。

 

役所に名前を登録する締め切りに遅れそうだったのよ。それで私はよせばいいのにおせっかい出して、こういったの。こういうことは単純明快にやったほうがいいよって。*3

 

作家の井上ひさしさんがたしかこんなことをいってたわ。間違ってたらごめんなさいね。つまり、なにかを表現する場合には、3つのポイントがあるんですって。1つは、複雑なことを簡単にする。2番目は、簡単にしたことを、深くする。3番目は、その深くしたことを、ついでだから面白くするんだって。

 

それでね、おばさんはあなたの命名にあたって、この三原則を応用したの。いま津森家にとっていちばん必要なことは、最高の明るさと元気さである。うじゃけた陰気虫とネクラをぶっ飛ばせ。あなたの誕生がそのきっかけになればいい、と思った訳。*4

 

その時、いきなり思いついたのが陽子という名前でした。太陽のように明るく、元気で、どんな困難にぶち当たっても決してめげない前向きな存在になって欲しい。20年前、そんな思いを込めてあなたの名前が誕生しました。

 

陽子ちゃん、これからも陽子らしくのびのび生きてください。おばちゃんはいつもあなたを見守っているわ。

 

  • アドバイス
    • 1姪の名付け親である伯母が、成人式で明かす命名にまつわる秘密である。
    • 2あまり深刻にならないで、20年前を振り返る伯母。姪は興味津々で話に引き込まれていく。
    • 3井上ひさし氏の三原則は、なぜか永六輔氏によってもPRされ有名。有名であるだけでなく、こうしたあいさつやスピーチを考える際にも参考になる。
    • 4三原則との関連はあまり論理的ではないが、当時津森家を覆っていた複雑なムードを陽子という単純明快な命名で一掃し、陽子が、太陽系の中心である太陽のような存在となって、津森家をよりいきいき楽しく発展させたい、というように解釈できる。

 

  そのときはやわらかなことばをつかうのよと美枝子さんがアドバイスしている 蝶人

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