蝶人物見遊山記 第347回
次男と妻の付き添いで、生まれて初めて初台というところに行って、107歳か8歳まで長生きして、生涯現役で書や造形に取り組んだ偉大な芸術家の個展を見物しました。
和紙に時には朱も交えて墨痕淋漓と描かれたモンドリアンみたいな構成は、書家というより隅々まで計算されつくした画家の仕事で、そのすぐれた造形感覚が建築物の内装や壁画に連なっていったのは理の当然といったところ。
終わり近くに野上弥生子の「秀吉と利休」という本の題字をみて、ああこの書体が篠田選手のものだったんだ、と気づきました。
旧電通ビルのロビーにあった彼女の壁画をビデオでみて、俄かに懐かさを覚えましたが、丹下健三の設計によるこのビル自体が、既に解体された模様。あの作品はいったいどういう運命を辿ったのでしょうか?
ビデオはもう1本、昭和の時代に仏蘭西人スタッフが本邦の「書」を取材したドキュメンタリーがあって、その一番終わりに若き日の彼女が書をするシーンが登場しますが、これが筆チョンチョンのスイスイスイといった安直な代物で興ざめでした。
終了まぢかの会場は、趣味の良さげな女性たちでいっぱい。いかに彼女が同性のあこがれの星であったかを雄弁に物語っていました。
戦争は映像戦争となりゆきてロシアとウクライナが激しく競う 蝶人