不確かなメロディー (DVD)
ラフィー・タフィーの全国ライヴ・ハウス・ツアーに同行したカメラが捉えた忌野清志郎のドキュメンタリー映画。2000年のツアーで当時はインディーズだった事もあってか小型のバスで公演地を回るというまるで新人バンドのような彼ら。もちろんこのバンドのメンバーはサックスの武田真治を除いてベテランばかりなので、意図あっての事だ。
この映画の中で清志郎はいつものように淡々と、しかし明確に、珍しく自分の過去を振り返るようなインタビューに正直に答えていく。その姿はとてもステージで圧倒的な声量と存在感を見せるスーパースターとは思えないほど、シャイで穏やかで可愛らしい。彼の場合、こういったステージとのギャップが印象的でもあり特徴でもある。その証拠にうちの嫁はライブ前にステージ脇で彼がボーヤをどつきまわしているのを見た事があると言っていた(笑)。もちろん清志郎であっても聖人ではない。
RCサクセションのファンだったのでどうしても解散後の彼は(タイマーズを除いて)RCに代わる何かを探しているのかなぁ、なんて思ってしまうのだが、実はそんなことは全然なくて、いつも自分のやりたい事をやっていただけで、このバンドにも充分手応えを感じていた事がよく分かる。もう亡くなってしまった彼の活動をどうのこうの言うのも変だが、これがあっての再度のソロや病気、そして病気の再発を経ての復活、そして死だったことを思うと本当に感慨深いというか、感動的というか…。そういう彼の本気度みたいなものって現役当時はなかなか分からなかった。結局作ったバンドも乱立したしね。
そんな2000年の彼を見て感じ取るには最適な映像であることは間違いない。ライブでの清志郎は以前と変わることなく圧倒的で、存在感たっぷりで、小さな箱でもお構いなしに楽しそうだ。あまり彼のギターがはっきりフィーチャーされる事って無いように思うが、時々とても印象的なフレーズを弾いて、ギターの腕もなかなかのものだったのがよくわかる。
返す返すも残念だったのは2003年12月の岐阜での公演を、チケットを持っていながら仕事で行けなかった事(当時はもうラフィータフィーではなかったが)。いや、頑張れば行けたのだろうが、そこまでのパワーというか執着がなく、つい機会を逃してしまった。そしてその後は機会がないまま…、後悔しても仕方がないが。合掌。