ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

松井屋酒造場 @岐阜県加茂郡富加町

2015年06月02日 | 岐阜県(中濃・老舗)

岐阜県加茂郡富加町にある酒造「松井屋酒造場」。こちらは江戸時代の町屋がそのまま残り、現在でも昔のままの手法でお酒を造っているという貴重な酒造。どこかで野立ての看板を見たことがあり、以前から存在は知っていたが、酒に精通した知人のK氏と話していて話題に挙がったので、初めて店に入ってみた。この店のある「加治田(かじた)」の近辺は狭い街道沿いの集落なのだが、近くに「清水寺」があるものの、すでに昔の面影を残す建物はほぼ無くなっている。店の横に車を停めて、中に入ると帳場には主人がいらっしゃった。店の奥は暗いが、昔の生活の道具が色々置いてあり、酒蔵は酒造りの時期以外は「酒造資料館」として公開しているのだそうだ。見上げると信じられないくらい太い梁が渡っていて、へーっと感心していると、主人が色々説明してくれた。

建物は220年前そのままだそうで、太い梁は大人が上に寝転がることが出来るほどの幅だとか。長さは6間半(約12m)もある。街道に面した窓もつっかい棒を使って開ける「蔀戸(しとみど)」だし、格子は「鬼格子(おにごうし)」と呼ばれる太いもの。名称をよく知らないのがもどかしいが、店を終う際の表の木戸も時代劇で見るような小さい入口がついたもの(主人がわざわざ引き出して見せてくれた)など、実際に今も使われているのが信じられないくらいの代物だ。主人はこの地方の歴史にもすごく詳しく、信長などの歴史上の人物がどのようにこの地方に関わったかを丁寧に教えてくれた。主人によると、ここはその昔、美濃と飛騨を結ぶ交通要所として栄えたのだが、大正時代に国有鉄道・越美南線(現・長良川鉄道)が敷設された際に、汽車が通ることを拒んで、路線と駅(現・富加駅)が南にずれてから、人の通りが無くなって没落したのだとか。

この日はもう夕方だったのでこれ以上居る事が出来なかったが、次はその酒蔵資料館にも入らせてもらおう。という訳で、こちらで醸している酒を買ってみた。基本の酒は上撰「睦鳥」、純米酒「半布里戸籍※」、本醸造酒「加治田城」の3種。今では上撰(昔でいう2級酒)も本醸造もほとんど変わりがないとのこと。そこでクラシックなラベルの「睦鳥」を購入した。炭濾過が控えめなのか、色が濃く、しっかりとした印象。昔風にもっと甘ったるい感じを想像していたが、そんな事はなく、燗で引き立つなかなかいい酒だった。(勘定は¥870/720ml)

※ こちら富加町は奈良・正倉院に残る日本最古(1,300年前)の戸籍「半布里戸籍(はにゅうりこせき)」に載っている土地として有名なのです。

 ↓ こちらが件の「富加駅(旧・国鉄加茂野駅)」(大正12年・1923・建造)。松井屋酒造から南西に4km程。駅舎にテナントとして税理士事務所が入っている。(下右・線路側より撮影)

 

松井屋酒造場

岐阜県加茂郡富加町加治田688-2

( 富加町 加治田 とみかちょう かじた むつみどり はにゅうりこせき 長良川鉄道 越美南線 )

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