蕎麦屋の暖簾としては有名な「長寿庵」の屋号。その歴史についてはこちらに詳しく書かれている。300年もの歴史があり、現在でも関東を中心として300軒以上の店があるのだとか。その系列は大きく4つに分かれており、それぞれが歴史を引き継いでいる。何かと分かりにくくなることが多い老舗暖簾の系譜にあって、これだけ系統がはっきりしているのは珍しいことなんじゃないだろうか。今回伺ったのは創業が木挽町(現・銀座2丁目)で、昭和10年(1935)という「銀座 長寿庵」。銀座でも、東銀座の歌舞伎座の裏から、この店のある辺りまでは下町っぽい雰囲気があり、古い建築も所々に残っている。店はビルのテナントに入っており、間口はさほど広くない。昼前の時間だったが、店の中には何人も先客が。男性のひとり客が多かった。店内も気取りのない街場の蕎麦屋という感じ。テーブル席に腰を下ろし、品書きを眺める。とは言っても、こちらは「鴨せいろ」の元祖の店として知られていて、最初からそれを目当てにして来たのだった。給仕の男性に「元祖鴨せいろ」を注文。周りを見ても鴨せいろを頼んでいる人が多かった。
しばらくして盆にのった鴨せいろが登場。つけ汁はお椀の中に入っていて、鴨肉と葱が浮いている。もちろん温かい。HPによると、鴨せいろが誕生したのは昭和38年(1963)とのこと。ほう、意外と新しい。今でこそ「つけ麺」が大流行りなので、冷たい麺を温かいつけ汁に浸すことは珍しくもないが、当時はどうだったのかしらん。箸で蕎麦をつまむと、切りが普通より長め。つゆに漬けて啜ると、濃いめの鴨出汁の風味が蕎麦と共に口中を支配して、旨い。蕎麦自体もしっかりとした張りがあり、なかなかのもの。これだったら普通のせいろでも食べてみたいな。時々つゆだけ啜ったり、鴨肉を口に放り込んだりしながら楽しんだ。残ったつゆには蕎麦湯を足す。さらっとしたタイプの蕎麦湯で、濃いめのつゆがいい塩梅に。刻み葱も足して、全部飲み干した。(勘定は¥1,100)
↓ 近くで見つけた近代建築(詳細不明)。壁面の装飾など、古びてはいるがなかなかいい雰囲気。1階はシャッターが閉まっていたが、まだ使われているのかな?
東京都中央区銀座1-21-15
( 銀座 銀座長寿庵 ちょうじゅあん 元祖鴨せいろ 鴨せいろ 鴨せいろう 木挽町 こびきちょう )