近代建築を観察するために人形町の路地をウロウロ。この辺りはいまだ古い一般建築が残っていて、時折足を止めたくなる建物が散在する。以前にも訪れた「喜寿司」(実際の喜の字は七が三つ)の前まで来たら、急に握り鮨を食べたくなり、全然予定に無かったのについつい暖簾をくぐってしまった。大正12年(1923)創業の江戸前握り鮨の名店。かれこれもう5年ぶりくらいだろうか。木造の一軒家は昭和27年に芸者の置屋を改造したという歴史あるもの。幸いカウンターが空いていて腰を下ろすことが出来た。ピシッとのりの効いた白いカバーの椅子が眩しい。前に来た時には主人は不在だったが、この日は漬け場の中に。雑誌などでよく見かけるが、この方の姿は凛として本当にかっこいい。物腰も丁寧で、女性の先客に旬の鮨ダネを丁寧に説明していらっしゃった。生憎主人の前は先客が座っていたので、自分が握ってもらうのは前回と同じ大ベテランのY氏(名札で名前が分かります)。
お茶とおしぼりを持って来てくれたのは後を継ぐ息子さん。こちらには「おきまり」があるので、握りを注文。「おきまり」は値段が3種類あるんだけど、「並」とか「松」とか名前が付いている訳ではないので、品書きを見ながら「〇千円の」と金額を言わなくちゃいけない。他の客の前で、なんだか恥ずかしいというか…。かじき、漬け鮪、鯵などに混じって、初夏ならではの「ムギイカ」が入っていたのは嬉しかった。玉子は鞍掛けで間におぼろがかませてある。ここの握りもやっぱり旨いなァ。酢飯の塩梅がいい。最後の巻物が出たあと「他に何か握りましょうか?」と訊かれたが、主人の説明を聞いていたらどれも旨そうであれもこれもとキリがないし、食べ歩いていて明らかに喰い過ぎなので断腸の思いで断り、勘定をしてもらった。(勘定は¥3,240)
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↓ (下左)喜寿司の隣にある「多和田歯科」。和洋折衷の独特な建築。以前からずっと人気が無いままだ。(下右)逆読みの看板跡が残る向かいの「旧・神谷商店」。何を商っていたんだろう…。
↓ 近くの「加島酒店」。金文字の「キンシ正宗」の看板がいい。ここは主人の配達が終わる夕方ごろから角打ち(立ち呑み)が出来るとか。残念、呑んでみたかった…。
喜寿司 (㐂寿司)
東京都中央区日本橋人形町2-7-13
( 人形町 日本橋人形町 きずし きすし 油井隆一 ゆいりゅういち 㐂寿司 )