ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

ぼたん @東京・神田須田町

2015年05月16日 | 東京都(老舗)

 

神田食味新道に載っている歴史ある神田須田町(旧・連雀町)の店で唯一未訪だった鳥すきやきの「ぼたん」にやっと行く事が出来た。創業が明治30年(1897)頃で、建物は関東大震災後に建てられた昭和初期(昭和4年とか)の建築(都選定歴史的建造物)。隣の区画にはあんこう鍋の「いせ源」、斜め向かいの区画には揚げまんじゅうの「竹むら」という、タイムスリップしたような贅沢過ぎる立地。鍋なので出来れば1人じゃない方が…と思っていたのだが、連れとどうしても予定が合わせられず、単独で訪問することに。平日の昼時をかなり過ぎた時間だったが、老舗らしく中休みが無いので、風情ある玄関口を通り、1人では入り辛かった老舗の引戸を思い切って開ける。

玄関先で仲居さんが「こういう料理ですがよろしいでしょうか?」と品書きを見せてくれた。鍋で1人だったので確認されたのだろうか、それとも午後の遅い時間に、安くない値段なので念を押されたのだろうか。「もちろんです」と答え、靴を脱ぐ。普通なら下足札をもらうのだろうが、客は自分しか居ないようで、そのまま1階奥の小部屋へ。さすがに他には誰も客がいない。歴史ある建物の風情に浸りながら、籐の敷物の上に敷かれた座布団に腰を下ろすと、すぐに料理の準備が始まった。しっかり火の熾った炭が用意され、こんろの上に「牡丹」の銘の入った浅い鉄鍋が置かれる。炭を入れるこんろの周りは銅板になっている。酒を冷や(常温)で注文して、準備万端。仲居さんが酒とお通しの佃煮を持ってきてくれ、鍋の最初の分は作ってくれる。広く静かな風情ある店内で、たった1人、仲居さんの調理を見守りつつ酒を飲んでいると、なんだか不思議な気分。ある意味すごく贅沢で、特異な体験だ。歴史的な建物と料理を独り占め。

残りの調理の説明を受け、仲居さんは離れ、酒で舌を湿らせつつ出来あがりを待つ。やがて鶏肉に火が通った。炭なので火の大きさは調節出来ず、グツグツと強く煮立っている。まずひとつ口に入れてみると、しっかりした食感の鶏肉で抜群に旨い。やや甘めの割り下の加減もよく、色んな部位が入っているので、ひと口ひと口違う風味が楽しめる。そのままいただいたり、生玉子に漬けて食べたり。ざく(葱、しらたき、豆腐)も味が染みて食べごろになった。つくねは普段食べているものより粗くまとまっているが、頼りない食感ではなく、存在感があって旨い。今までやったことないけれど、自分でも鶏肉ですきやき、試してみよう。余計なBGMは何も無い、鍋の煮える音と、遠くの板場で調理人と仲居がしゃべる声だけが微かに聴こえる空間で舌鼓を打った。

ちょこちょこ食べ歩いているのでお腹は充分にいっぱい。でもご飯があるというので、せっかくなのでほんの少しだけつけてもらった。玉子丼にも雑炊にも出来ると言われたが、雑炊は残してしまいそうだったので、鍋の残りに生玉子を溶いて入れてもらい、茶碗のご飯にたっぷりかけて至福の締め。香の物と共にいただいた。水菓子は丸ごとのみかん。勘定をしてもらい、店をあとにする。大満足。今度は連れと一緒に、雰囲気の違う賑やかな大広間を味わってみたいな。(勘定は¥7,600)

 ↓ 伝票の図柄も印鑑も素敵だ(写真右)。

 

↓ 斜め向かいにあった銅板建築(現「アナンダ工房」)(詳細不明)。よく見ると一番上になんだか艶めかしい2匹の獅子(?)が寝そべっている。

 

 ↓ 須田町交差点にある風格あるビル「鷹岡(株)東京支店」(昭和10年・1935建造)。本社は大阪の洋服卸会社。

 

 ↓ 以前は早朝で中に入れなかった「東京復活大聖堂教会(通称・ニコライ堂)」(明治24年・1891建造・1929修復)。中のステンドグラスは見事だった(内部撮影は禁止)。

 

 ↓ イエス・キリスト様も、日本では日本語の書物を持つ。「太初に言有り、言は神と共に有り」と書かれている。

 

鳥すきやき ぼたん

東京都千代田区神田須田町1-15

( 神田 鶏すきやき 鳥すき焼 連雀町 ニコライ堂 教会 池波正太郎 ) 

 


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