こんな気持ちでいられたら・・・一病理医の日々と生き方考え方

人生あっという間、私の時間もあと少し。
よりよく生きるにはどうしたらいい?

電顕室の暗闇の中で

2012年11月07日 | 病理のこと、医療のこと、仕事のこと
不肖コロ健、電子顕微鏡(電顕)を用いての写真撮影は自分で行っている。
電子顕微鏡は内部を真空にするためのポンプがあったりして、結構大掛かりな装置で、”電子顕微鏡室”という、専用の部屋を設ける必要がある。
これが、私の勤務先の病院においてある電子顕微鏡装置で、裏側に真空ポンプがおいてあって、稼働中は結構うるさい。

さて、電顕標本を観察するときは、蛍光板というのに試料の像を結ばせるので、部屋を暗くする。
覗き込む窓は1つで、おでこをくっつけて隅から隅まで調べる。
隅から隅まで、といっても試料の大きさはとても小さくて、そのうちの一部を拡大して数ナノメートルの世界を探査する。
宇宙には行けないけれど、小さな世界にもまだまだ分からないことは多い。

私の尊敬する病理の先生は、私がまだ駆け出しのころ、
「病変を肉眼で見たら、そのまま、電子顕微鏡像までわかることができるようになりたい」
とおっしゃっていた気持ちがやっと最近分かってきたような気がする。

病理医は、大小に関わらずあくまでも形態像にこだわる。
私を指導してくれた教授はいつも、
「私たちは、形態学者だから」と言っていた。

以前は白黒写真を撮って現像していたが、今ではデジタル化されているのでずいぶん楽になった。隣りに現像用の暗室があったのだが、今では潰されて遺伝子検査用の撮影セットが置かれている。

電顕はやや時代遅れの装置と考えられがちだが、病態を把握する上では必須の装置である。電顕診断の多くが、外注化されているのは残念なことである。

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