こんな気持ちでいられたら・・・一病理医の日々と生き方考え方

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よりよく生きるにはどうしたらいい?

医局に頼らない生き方

2013年02月01日 | いじめ飲酒とタバコとギャンブル
日本の医師は医学部を卒業すると、2年間の臨床研修を行うという制度が2004年に始まった。早いもので、制度が始まってから、もうすぐ10年になる。
医学部卒業後の教育に、いろいろと問題があった頃のことで、この制度の開始時、医学生には好意的に受け入れられたのではないだろうか。
問題の一つは、医学部の教授の問題。
教授の要件というのは、すぐれた研究活動を行い論文を量産し、さらに後進にも論文を書かせることができることである。
ところが、日本の医学部教授は、学問以外のことにも絶大な権力を持っている。それが、人事権だ。
医局人事というものを握ってさえいれば、自分の意にそぐわない人間は邪魔になればどこかに飛ばしてしまえる。だから、下の人間、すなわち医局員は教授という絶対権力に従うしかない。
まあ、そこから、有形無形のハラスメントが生まれることとなる。

まだ、カルテが紙であったころ、教授回診で担当医がしどろもどろだったりしたら、カルテを窓から放り出した、とか、外科の教授は手術台の下で下手な助手を蹴る、だのいう逸話は尽きることが無く、精神的、肉体的な暴力というのがさんざんあった。
自分の学術的もしくは技術的なこととはべつのところで、理不尽なことがまかり通っていたため、大学医局というものに嫌悪感を示していた医者は多かった。そんなことで、臨床研修制度は多くの医学生に歓迎されたのだろう。

すべての事象にはいい面と悪い面がある。大学医局に属さないことで、幅広い年齢層の医者との交流を得ることができなくなる、などという不具合もある。そもそも大学医局に属したくない、ということで、学問ができなくなる、という主客転倒の事態も起こる。
いずれにせよ臨床研修制度の導入は日本の医学界を改革したことにはなるだろう。この流れ、良いか悪いかは別として、維持してくしか、道はあるまい。
だが、大学医局という、ある意味頼ってさえいればいいだけの楽な組織の解体によって、日本の医学徒はただ勉強をして、教授のいうことを聞いていればいいというわけにはいかなくなった。
一人一人がしっかりした将来像を持って、自分で考えていかなくてはならなくなった。
全てのことは表裏一体である。

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