仕事をするにあたって、すぐに結果を出さなくてはいけない世の中になってきてしまった。電子機器の発達で、様々な情報にアクセスしやすくなり、情報が均てん化したことも原因の一つにあるかもしれない。じゃあ、何でもかんでも結果が出ないままダラダラと時間をかけていいのかというと、それはもちろんよくない。
研究活動の1クールはだいたい3年。なぜ3年かというとほとんどの研究費が3年単位で組まれているからだ。3年あるからといって、3年丸々手を動かしていられるわけではない、研究を開始するにあたっての準備期間、先行研究期間は別としても、実際に手を動かせるのは2年ぐらいだ。でも、研究によってはずいぶん時間のかかってしまうものもあり、満足な結果を出すことは難しいことも少なくない。研究が必要結実するには時間がかかる。それでも、研究費を出す側も専門家を会議などに派遣し、内実を見て、意見を出してくれるし、継続する価値があればそのためのアドバイスもしてくれる。昔に比べたら研究費の使用環境は確実によくなってはいる。
なんでこんなことを書くのかというと、私の家のレモンの木を見てのこと。この家に植え替えた年こそよく実がついたが、あとは全くダメだった。去年、皮がやたらと厚い実がいくつかなったと思ったら、今年皮の薄い、すなわち果肉の多い実が沢山なった。良い実がつくには時間がかかるものだとびっくりしている。
政治家は、”スピード感を持って”とすぐにいうけれど、それは災害や有事の際に使う言葉で、なんでもかんでもスピードとはいかない。研究もそうだ。AIはこの先も発達して、人間が思いもつかなかったような技術的革新を遂げていくだろうけど、人間にしかできない発想というのは必ずある。そういったものの熟成には年月が必要だというようなことをレモンの木が気づかせてくれたように思う。
考える葦