待ち方のうまさ(香川真司)

埼玉県では一気に春が到来したような気候ですが、午前中にちょっと時間があったので、香川真司がハットトリックを決めたマンチェスターU対ノーリッジ戦のビデオを見ていました。香川真司にとってハットトリックはJ2時代のC大阪対水戸戦以来で、プレミアリーグではもちろん日本人初です。

香川真司はJ2時代にMFながら得点王を取り、ドイツのドルトムント時代も得点力を評価されていた選手ですが、マンUではこれまで2得点と持ち味を発揮できていませんでした。マンUでは2トップのルーニーもファンペルシーも記事にしたことがあるので、香川真司に着目して見ていました。

もちろん点を取るのは香川真司のわかりやすい長所ですが、FWなら点さえ取ればいいですが、MFとして出ている以上チームの中で何か役割は担っているはずです。以前見たルーニーに出したダイレクトプレーなどアシストもありますが、香川真司はマンUの攻撃において「潤滑油」です。

香川真司が得意なのは相手DFの間で待つポジショニングです。相手のノーリッジが4-5-0-1の極端なリトリートサッカーで、後ろの2ラインはコンパクトに引いていましたが、香川真司はそれでもどこかにスペースを見つけて正確に味方にパスしていました。

元日本代表監督、イビチャ・オシムの指摘によれば香川真司の成功は意図的に身体接触を避けているからだという話です。確かに香川真司は長い時間ボールを持つことは少なく、大抵ダイレクトではたいてフリーの味方を見つけています。

それでも、香川真司は自分はチャンスメーカーではないと言い切るほど、得点力には自信を持っているようです。この日のハットトリックはすべて力ではなく、技術で決めた点でした。ワールドクラスのルーニーやファンペルシーが信頼してパスを出してくれるのも理由ですが、無駄な力を入れずうまくGKの逆へ蹴り込めるのはさすが香川真司だなと思います。

補強した香川真司が試合に出ている以上、誰か代わりに出られなくなった選手がいるはずと思っていましたが、ポルトガル代表MFナニです。ナニも入団時はCロナウド二世という期待も担った選手なので、その選手に勝って試合に出ている香川真司はそれだけでも立派だと思います。

名古屋戦マニアック分析

名古屋は闘莉王の負傷欠場で、開幕戦の3バックから4バックに布陣を変更してきました。ただ、この日の名古屋のCBは増川とダニエルという高さとパワーのタイプで、スピードで勝負する興梠が相手なら脆さを見せる可能性もあるとみていました。この日の興梠はシュートこそゼロでしたが、動き出しの早さと引いて受ける柔軟性を見せ、ボールタッチ数が多かったことは評価しています。

浦和はミシャのいつもの布陣の3-6-1ですが、いいときの浦和は両アウトサイドが面白いように空くのが売り物です。実際、梅崎と宇賀神の両アウトサイドは積極的にシュートを打ちに行くことを売り物にしています。もっとも、この日の浦和はアウトサイドより2シャドーにボールを受けさせる攻撃を多く用いました。

アウトサイドよりはゴールに近い2シャドーが受けた方が点に近いのは確かで、相手の出方次第で変えることになります。点こそ取れなかったものの原口は好調を維持しており、あと一歩でシュートに持ち込めた場面は何度も演出してくれました。

柏木はマルシオのスタメン落ちでセットプレーのキッカーを任されましたが、いい位置で何度かFKをもらったものの壁に当てるミスも見られました。左足の方が狙いやすい位置だったので槙野が蹴るより確率は高かったですが、日本では名手と言われる中村俊輔や本田圭佑あたりでも壁に当てることはあるので仕方ないでしょう。

もっとも、柏木もCKではいいキックもしており、2度永田の頭にピンポイントで合わせることができました。永田は新潟時代は年間1,2点程度と、あまりヘディングシュートで点を取っているDFではないので、外したことは仕方ないですが、柏木が合わせられたことを評価したいと思います。

内容が良かった試合だけに、最終スコアが1-0だったことはもったいないような気もしますが、後半のシュート数が浦和11本、名古屋2本だったことを考えるとうまく試合を終わらせた試合で、危ない場面は前半の立ち上がりに小川のシュートがポストをヒットした1本だけでした。

この勝利は大きいです。次のムアントン戦が今後のリーグ戦にどういう影響を及ぼすかはわかりませんが、うまくターンオーバーして、疲れている選手は思い切ってベンチからも外す決断を、ミシャには期待したいと思います。