北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

負の連鎖を断ち切ろう

2012-11-30 23:45:54 | Weblog


 釧路の小中学校にはソーシャルスクールカウンセラー(=SSW)という名のカウンセラーが配置されている。

 先進的な自治体では既に行われているのだが釧路市では今年から始められたものだ。

 先日この方Aさんと直接お会いして、今何が問題になっているかについて意見交換をする機会を得た。

 Aさんはかつて市役所で長く福祉の専門家として仕事をしておられた方で、福祉のプロと呼んでも良い。

 福祉のプロという表現があり得ると思うのは、福祉には多岐にわたるメニューがあって、どれをどのように適用させるかには専門家の目とノウハウが必要だからだ。

 そして本人を救済するメニューについては、いくつかの係の担当者が集まって侃々諤々の意見交換をして対応をして行くのだという。


   ◆  


「SSWになってみてどんな感想ですか?」と訊くと、「一人で全部の小中学校を回るので手が回りません(苦笑)」とのこと。

 そして、「福祉で働いていた時は、学齢以前を福祉で面倒を見ていた子供達が、学校へ入ると見えなくなっていました」と言う。

「見えなくなるとはどういうことですか?」
「困窮している家庭を訪ねて親御さんや子供さんを福祉事務で支援しているときは子供さんの顔が見えていますが、それが学校にはいると福祉の手から離れてしまうのです。教育部門の学校の先生の仕事として対応されているのかも知れませんが、そうして一度見えなくなった子が中学校を卒業した時に今度は高校へ行けなくて、再び福祉の対象となって現れてくるということがあります」

「その理由はどういうことでしょう」
「家庭の事情や理由は様々ですが、貧困故に家庭での生活が安定せず落ち着かず、学力が身に付かない。学力が身に付かないので学校へ行くのが楽しくないし、親も子供の指導力に欠けるので不登校になる子が出てきます。不登校でなくても学力が身に付かなければ勉学への意欲が失われて高校進学が難しくなり、就職もできずやはり困窮する主体として再び社会に登場してしまうのです」

「貧困の世代間連鎖というわけですか」
「はい、女子などは若くして結婚、子供ができて離婚して母子家庭となり生活保護世帯となる子も少なくありません。一度そうなるとこの母子家庭の子供さんもまた同じような道を歩んでしまいます。この連鎖をどこかでとめなくてはなりません」

「現実にそういう子供達を就職まで結びつけるということができますか?」
「以前は准看護師という資格があって働きながらその資格を取ってなんとか就職に結びつけることができたのですが、今はその資格自体がなくなってしまいました。厳しいですね」


  ◆   ◆   ◆


 子供個人の学力をなんとかすることで解決に結びつくのか、とも思うが、問題は日常の生活規律や生活の意欲、向上心などが育ち切れていないところにある。

 SSWが学校に配置されたことで、学校の先生たちには福祉的なものの見方がある程度刺激になっているとも聞くが、先生たちに福祉的な家庭ケアを望むのは到底無理がある。

 一人ひとりにきめの細かい福祉がなされれば良いのだが、学校行政と福祉行政などさらなる行政同士の協力と連携はもちろん、企業やNPO、ボランティアなど様々な地域の力が必要だ。

 世代を超えて連鎖する貧困と困窮をいかに断ち切ることができるだろうか。

 全国でも様々な取り組みが始まっていると聞く。先進的な事例を学んで、地域でもどんどん活かしたいものだ。

 SSWの成果にも期待したい。 

  



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする