北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

奔別アートプロジェクト2013~石炭の歴史がここに

2013-10-19 22:58:29 | Weblog

 

 快晴で行楽日和の一日、三笠市の旧奔別炭鉱で開催されている"奔別アートプロジェクト2013"へ行ってきました。

 桂沢ダムへ向かう道道116号線は何度も車で走ったことがありますが、これまではついぞこの旧奔別炭鉱を見たことはありませんでした。

 道内で最も高い立て坑の朽ち果てた建物は、かつての石炭産業華やかなりし頃を髣髴とさせる威風堂々ある姿です。

 このアートプロジェクトは、昨年に続いて二度目の開催で、今年は札幌市立大学の主催として、NPO法人NPO法人炭鉱の記憶推進事業団が協賛という形を取っています。

 このプロジェクトは、三笠市にある旧住友奔別炭鉱の石炭積み出しホッパーを昨年と同様会場にして、インスタレーションとして様々なアートのある空間として提供することで、炭鉱遺産の価値と記憶を甦らせ、炭鉱の記憶と人々を繋ごうというものです。

 アート作品は単なる芸術作品を置いているだけではなく、風で動いたり、音と映像で表現したりしていて、それがかつて石炭を積みだしていた大きな空間の中で炭鉱、そしてそこで働いていた人たちとの関わりを表現しています。

 どう感じるかは人それぞれですで、私はただただ、かつてこんなに広い建築空間を使って日本のエネルギーを支えた時代と人に敬意を表せずにはいられませんでした。

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 会場にはこのイベントを教えてくれた、炭鉱の記憶推進事業団の酒井裕司さんがいて、この奔別炭鉱の様々な歴史的バックグラウンドも教えてくれました。

 今に残る立て坑では、四階建てのエレベーターで一度に約70人もの人を地下の坑道に送り込み、石炭を貨車に積み込んだ状態で地上へと運び出していたのだそうで、その深さはなんと735m!

 立て坑は当時としては最新の設備で、それまで斜坑で運び出していたのを効率的にするために大きな投資をしたのだそう。

 ところが折しも札幌方面で大規模な都市開発が始まりまた事故も発生し、暑くて危険で大変な労働環境を嫌った多くの炭鉱夫が次々に炭鉱を去り、労働者が集まらなくなったことで操業が不可能になったのだとか。

 埋蔵量に全く問題はなく、莫大な投資をした割には収益は上がらなかった残念な炭鉱となってしまいました。

  
 しかしながら今に残る立て坑は、赤錆びて骨組みが見えてしまっていても、その威容は快晴の空をバックにしてなんとも写真を撮りたくなる威風堂々たる姿です。

 周りには多くの家があってさぞにぎわったことでしょう。往時の姿がしのばれます。


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 さて、採炭が行われていた時に掘り出した塊から石炭とズリを分けて選炭をし、その石炭だけを集めて貨車に積み込むのが積み込みホッパーという施設なのですが、
インスタレーションはこの一階の部分を中心に展開されていました。

 ここは石炭貨車を引っ張る列車が三列になって入ってきて、用意ができたら天井の穴から石炭が落ちてきて貨車に積み込むという施設。

 私が面白いと思ったのは、施設の半分の天井を支えているのが四角張った構造なのに、途中から丸みを帯びたアーチ形に変わっている点でした。

 それを酒井さんに指摘すると、「するどいですね。まさにそれこそ、住友財閥がこの炭鉱を買収して立て坑に投資をし、採炭量が激増した時に増設された部分なんですよ」とのこと。

 ちょっとした時代の違いが構造の改良に反映されていることに、最新の考えを取り入れようとした炭鉱建築技術者たちの意気込みを感じて、感慨深いものがありました。

 
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 インスタレーションの最後を彩る「黄金郷(El Dorado)」という作品は、このホッパーの天井部に黄金色の動植物が配置されたもので、施設が自然に還る状況を表しているのだとか。

 天井部にうずたかく積まれたであろう石炭の山が見えるような気がしました。

 
 さて、空知地域の産業遺産でもあるこの積み込みホッパーは、民間施設でもあり危険なため普段は全く立ち入ることはできません。

 このイベントは11月3日までの土・日・祝日に限って限定的に見ることのできる貴重なものです。

 この機会にぜひ一度は、皆さんにも北海道の産業を支えた雄姿を見て欲しいと思います。

 北海道の歴史がここにあります。

【奔別アートプロジェクト2013】 http://pon.soratan.com/

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