北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

伊達市の歴史から学ぶこと ~ 都市計画学会研究発表会

2018-10-27 23:44:45 | Weblog

 

 今日は都市計画学会北海道支部が主催する2018年度の研究発表会です。

 札幌は朝から結構強い雨が降って、警報が発令されるたびに家中のスマホが鳴り出してなにやら騒然として感じ。

 幸い午後は雨も上がって、今日の会場の北大工学部へ向かう途中は、北大構内の銀杏並木の黄葉が雨に濡れて美しい風情でした。

 深まる秋の北海道は彩りが豊かです。


 さて、都市計画学会の今年のテーマは「歴史とまちづくり」です。

 研究発表会のプログラムは、発表をエントリーした人たちが研究内容をA0サイズのポスターにまとめたものを貼って、それを訪れた人たちが見て意見交換をするポスターセッションから始まります。

 後ほど、優れた研究に対して「支部長賞」や「優秀賞」などの顕彰があるので、ここで内容をしっかりと見ておかなくてはなりません。

 発表内容は、地域資源の発見、価値増進などの地域振興に関するものから、人口減少に直面する地域がどのようにそれに立ち向かってゆくか、というものまで幅が広くて、興味深いものばかりでした。

 研究発表を見ていると、地域のニーズに応えようという実学的なアプローチが多いことが、都市計画学会の一つの特徴のように思えます。

 こういう場に、もっと多くの地方自治体職員の方の姿があって、議論の内容を聞いてもらい、また様々な人材との交流が生まれたらよいのになあ、と思います。

 
    ◆


 さて、基調講演ですが、講師は伊達市噴火湾文化研究所学芸員にして、伊達市を開拓した亘理伊達家の第20代当主である伊達元成氏。

 亘理伊達家の第20代当主などと言われると、どれくらい高齢の方が来るのかと思いきや、なんとまだ39歳という若い御当主でありました。

 テーマは「仙台藩士のグランドデザイン —その町並み、どう生かすか—」と題した、伊達市における伊達氏の果たした役割と、まちづくりにおける歴史の役割についてのお話です。

【講演内容】
 北海道伊達市は明治3年に、仙台藩亘理伊達家(わたり・だてけ)によって開拓されたまちです。

 この年に亘理伊達家は、大滝、壮瞥、伊達の一体を明治政府から治めるようにという太政官の布達を受けて、家臣2700人を率いて北海道へ渡りました。

 この背景には、戊辰戦争があります。

 伊達家は、徳川についたために戊辰戦争には敗れたことになり、その戦後処理として領地を没収され、24万石がなんと58石になってしまいました。

 領地は南部藩へ移されたのですが、家臣もこの期に及んで南部藩に身分を写して帰農して農民になるということはプライドが許さなかったと言います。。

 それに、江戸時代末期になると北方警備のために、白老に陣屋を築いてえりも岬から国後・択捉までの警備を任されることになり、逆にこのことで北海道に一定の土地勘があったこともあるのでしょう。

 北海道へはいまの室蘭から上陸し、9回にわたって入職しました。

 今の伊達市は、先住していたアイヌの人たちの集落からは離れたところにゼロからのまちづくりを始め、その手本は宮城県の亘理町だったそうです。

 武士のまちづくりらしく、昔の道は幅が細かったり急な曲がり角があったりして、城下町的な街並みの特徴があります。

 ちなみに、伊達家というのは伊達政宗の直系による本家のほかに、一門、一家、準一家という風に分家して行って、いまでもそれぞれの当主の集まりもあるのだそう。

 さらに、人気のお笑いコンビ「サンドイッチマン」の伊達みきおさんとは、遠い昔に分家した遠い親戚にあたるのだそうですよ。

 さて、伊達市には伊達家ゆかりの歴史があるのですが、伊達政宗直系の本家ではなく、あくまでも亘理伊達氏が入植して開拓したものです。

 ところが、伊達家というとどうしても伊達政宗の印象が強いために、伊達家を表すのに兜の前立てを本家の「弦月」にしてしまったりしたのですが、実は亘理伊達家の兜の前立ては「毛虫」でなくてはなりません。

 毛虫の前立てなんて、気持ちが悪いと思うかもしれませんが、「毛虫は前に前に進むが後ろへ後退することはない」ということから、戦場でも後には引かない勇猛さの象徴なのだそう。

 着る服も将棋の「香車」をあしらったデザインが施されていて、ここでも「引くことはない」という心根を示しています。

 それには、その当時の市やコンサルタントに、深い洞察や思慮がやや欠けていたことを感じますが、それを講師の伊達さんは、「歴史という"経緯"への思いと、歴史に対する"敬意"を持つのが良い」とまとめられていました。

 今では、いろいろな歴史をテーマにしたデザインを進める上では「これで良いだろうか」という事前確認をしてくることが増えたとのことで、敬意の気持ちも育ってきているようです。

 今年の都市計画学会のテーマである「歴史とまちづくり」に相応しい講演で、北海道の歴史について多くのことを学べました。


 研究発表についての感想はまたいずれ。

 そうそう、今日は北大の黄葉祭だそうで、懇親会を終えて帰るころには夜の銀杏並木がライトアップされていました。

 観光地としてのコンテンツ整備にも努力している様子が伺えますね。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする