政府関係の本が必要になって、(さてどこの本屋さんへ行くべきか)と悩みました。
以前ならば、政府関係の白書など官公庁の行政関連の書籍などが山のように置かれていた「政府刊行物サービスセンター」という専門の本屋さんのようなところが北8条の合同庁舎一階にあったので、そこへ行けば手に入る、という確信がありました。
そこには官庁が発行する本だけではなく、各省庁の行政にまつわる研究家や専門家、さらに統計関係の本なども充実していて、私もその庁舎に務めていた時はよく目に付いた本を買ったものです。
ところがいつの間にか合同庁舎1階の本屋さんはなくなってしまいました。
さて、どこで買おうかなと思ってネットで検索をすると、なんと!私の職場から道路を一本挟んだところに「刊行物サービスステーション」というところがあると知り、歩いて現地へ向かいました。
目的の本屋さんは街の片隅にひっそりとありました。
目的の本も置いてあったのですが、本が並んでいるスペースは実に狭く、以前のような開放的な政府の行政情報拠点と言う感じはまったくありません。
お店を守っているのは年配の女性が二人で、私以外はお客が一人もいません。
買い物を済ませて帰ろうかというときに思わず、「そういえば以前、北8条の合同庁舎の1階にこんな刊行物を売っている場所がありましたよねえ。あれはどうしてなくなったんでしょうかね」とぽろっと口に出したところ、ちょっとご年配の女性から帰ってきた答えは、「あれは民主党の事業仕分けに逢ったんですよ」というもの。
「え、えー?事業仕分けでなくなったんですか?」
「そう、蓮舫がテレビでワアワアやっていたでしょう?あれですよ。刊行物センターは元々独立行政法人の国立印刷局の下に置かれていた組織だったんですけど、その事業仕分けを受けて、『家賃が高くて無駄、民営化だ』という流れで閉店になったんです」
「あ、それで合同庁舎の本屋さんはなくなったんですか」
「そう、うちはあと2年で創業100年になるんですけど、元々は道庁の西側の今別館になっているところにあったんです。それが、道庁爆破事件で場所を移ることになって、今のここに来たんですが、北8条の合同庁舎の中に刊行物センターをつくることになったときは、私の身内も手伝いに行っていたんですよ」
「へえ」
「それが事業仕分けで閉店になりましたけど、閉店になった翌年にまた政権が自民党に戻りましてね(笑)。後でセンターのあった場所を見に行きましたけど、電話交換の場所になったり、ごみの一時置き場になったりしていて、あんな良い場所がねえ、悲しいですよ」
私の周りでも事業仕分けの大波を受けた事業はいろいろありました。
それが国立印刷局がらみで政府刊行物センターにもこんな歴史があったとは。
「でもね、小泉政権の時から印刷物には逆風が吹いていて、政府の情報は印刷だけじゃなくてインターネットで見られるようにしなさい、という流れができましたから。当時に比べたらかなり印刷物として売るものが減りました」
「なるほど」
「そこへきて今はコロナでしょう?小さな書店が少しずつなくなっていますよ」
印刷物や本が受難の時代です。
インターネットのサーバーの向こう側にある知識や知恵はどうやったら身につくでしょうか。