訃報を聞いた時に追悼・淡島千景を書いたが、淡島千景の追悼上映が池袋の新文芸坐で始まった。今日は淡島千景を姉と慕う淡路恵子のトークショーも行われた。淡路恵子はまだSKD(松竹歌劇団)の研究生だったときに黒澤明監督の「野良犬」に抜擢された。そのときに淡島千景に憧れていたので、「淡」の字を入れた芸名にしたくて淡路島とは何の関係もないけど「淡路」とつけ、名前の方は黒澤監督が付けてくれたという。期せずしてそれは淡島千景の本名と一致していたということだ。
(淡島千景)
淡島千景は宝塚出身だが、淡路の時代は戦後の食糧難の時代で関西在住者しか宝塚を受験できずに仕方なく松竹を受けたのだという。映画でも淡島と淡路は共演が多い。しかし、映画界衰退後、舞台で「毒薬と老嬢」をずっと姉妹役で共演してきた思い出が多いということだった。淡路が夫だった萬屋錦之介の舞台の相手に淡島千景を推薦した話、デパ地下に行ったことがなかった淡島を案内して一緒に行ったときの話など、「お姉ちゃん」との思い出をきびきびと楽しそうに語って飽きない感じ。本当に敬愛していたのだなあという気持ちが伝わってきた。
(淡路恵子)
映画は「夫婦善哉」(1955)と「新・夫婦善哉」(1963)。「夫婦善哉」は何十年ぶりの再見。しかし「新」は初めてである。そっちで淡路と共演している。森繁が淡路と浮気し東京まで行ってしまう。淡路には「兄」と称する小池朝雄という愛人がいる。なんか成り行きで、森繁と小池が淡路を真ん中にして三人で寝る場面があって、おかしいことこの上ない。
(「夫婦善哉」)
小池朝雄は、「刑事コロンボ」の声をやった人で記憶されている。文学座分裂後に福田恒存とずっと行を共にした舞台人であり、「仁義なき戦い」シリーズでも活躍した。1985年に54歳で死去。森繁や淡島のように長命に恵まれなかったが忘れがたい俳優である。映画の方は、前作で幼かった森繁(維康柳吉)の娘がすっかり大きくなって、藤田まことがやってる医者と結婚する。森繁は安房鴨川で養蜂を始めようとして、最後は淡島が「頼りにしてまっせ」という。前作と反対。続編があることを知らなかった。
「夫婦善哉」は、たまたま成瀬巳喜男の超名作「浮雲」と同年に当たってしまった。ベストテンも1位と2位。淡島の一代のはまり役も、「浮雲」の高峰秀子が相手では演技賞がほとんど来なかったのもやむを得ない。どっちも「腐れ縁」の成り行きを描く名作だが、波乱万丈の末どんどん落ちて行く転落の様は「浮雲」の方が深い。「夫婦善哉」ではやはり「船場の名家」とか「芸者」とかいうプライドや名誉をめぐる意地の張り合いが大きい。
今後のスケジュールとしては、当時大ヒットした「大番」の正続、駅前シリーズの第1作「駅前旅館」(井伏鱒二原作)、小津安二郎の名作中の名作「麦秋」、一葉原作を3話オムニバスで描いた「にごりえ」(「東京物語」「雨月物語」を押さえ、当時キネマ旬報ベストワンになった)などの上映がある。あまり知られていない作品では、清水宏監督「母のおもかげ」が感銘深い。「鰯雲」は戦後の厚木近辺の農村の変容を描き、貴重な現代劇の役柄。2010年の「春との旅」が最後の作品。
(淡島千景)
淡島千景は宝塚出身だが、淡路の時代は戦後の食糧難の時代で関西在住者しか宝塚を受験できずに仕方なく松竹を受けたのだという。映画でも淡島と淡路は共演が多い。しかし、映画界衰退後、舞台で「毒薬と老嬢」をずっと姉妹役で共演してきた思い出が多いということだった。淡路が夫だった萬屋錦之介の舞台の相手に淡島千景を推薦した話、デパ地下に行ったことがなかった淡島を案内して一緒に行ったときの話など、「お姉ちゃん」との思い出をきびきびと楽しそうに語って飽きない感じ。本当に敬愛していたのだなあという気持ちが伝わってきた。
(淡路恵子)
映画は「夫婦善哉」(1955)と「新・夫婦善哉」(1963)。「夫婦善哉」は何十年ぶりの再見。しかし「新」は初めてである。そっちで淡路と共演している。森繁が淡路と浮気し東京まで行ってしまう。淡路には「兄」と称する小池朝雄という愛人がいる。なんか成り行きで、森繁と小池が淡路を真ん中にして三人で寝る場面があって、おかしいことこの上ない。
(「夫婦善哉」)
小池朝雄は、「刑事コロンボ」の声をやった人で記憶されている。文学座分裂後に福田恒存とずっと行を共にした舞台人であり、「仁義なき戦い」シリーズでも活躍した。1985年に54歳で死去。森繁や淡島のように長命に恵まれなかったが忘れがたい俳優である。映画の方は、前作で幼かった森繁(維康柳吉)の娘がすっかり大きくなって、藤田まことがやってる医者と結婚する。森繁は安房鴨川で養蜂を始めようとして、最後は淡島が「頼りにしてまっせ」という。前作と反対。続編があることを知らなかった。
「夫婦善哉」は、たまたま成瀬巳喜男の超名作「浮雲」と同年に当たってしまった。ベストテンも1位と2位。淡島の一代のはまり役も、「浮雲」の高峰秀子が相手では演技賞がほとんど来なかったのもやむを得ない。どっちも「腐れ縁」の成り行きを描く名作だが、波乱万丈の末どんどん落ちて行く転落の様は「浮雲」の方が深い。「夫婦善哉」ではやはり「船場の名家」とか「芸者」とかいうプライドや名誉をめぐる意地の張り合いが大きい。
今後のスケジュールとしては、当時大ヒットした「大番」の正続、駅前シリーズの第1作「駅前旅館」(井伏鱒二原作)、小津安二郎の名作中の名作「麦秋」、一葉原作を3話オムニバスで描いた「にごりえ」(「東京物語」「雨月物語」を押さえ、当時キネマ旬報ベストワンになった)などの上映がある。あまり知られていない作品では、清水宏監督「母のおもかげ」が感銘深い。「鰯雲」は戦後の厚木近辺の農村の変容を描き、貴重な現代劇の役柄。2010年の「春との旅」が最後の作品。