安倍首相の解散表明に合わせて、小池百合子東京都知事が「希望の党」を立ち上げ、自ら代表を務めると発表した。都議選直後のブログで、「小池新党」は必ず国政選挙に出ると書いたけど、本人がどこまで関与するかは判らなかった。自ら代表になるというのは、今後の政治行動をかなり縛ってしまうので相当リスクが高いと思う。それでも決断したのはどうしてだろうか? 選挙の構図を変えてしまう可能性があるから、注目して見ていく必要がある。
「希望の党」に希望はあるかというのは、大体二つの意味がある。一つはもちろん、「希望の党」が躍進することが日本の「希望」につながるのかという問題。もう一つは、「希望の党」から出る候補者にとって、希望の持てる選挙情勢になるかどうかという問題。僕は大体どこの党にも大した期待は抱いていない。もちろん「希望の党」にも特に大きな希望は見出さない。都議選以後の小池氏、並びに「都民ファーストの会」の行動を見ても、何してるんだと思うことが多い。
だけど、まあ公約も判らなければ、どんな候補が出てくるかも判らない現時点では、もう少し見ていることにしたいと思う。いま書こうかと思うのは、「希望の党」を小池氏自ら引っ張っていく意味についてである。ちょっと前から、自民党を離党した若狭勝氏と、民進党を離党した細野豪志氏が新党の立ち上げを画策していた。だが、この「若狭・細野新党」では、どう見ても力不足。小池氏に先頭に立ってほしいという要望は強いものがあっただろう。
とは言うものの、自分が都知事を辞めて国政に打って出ることはできない。2020年五輪を終えるまでは、都政投げ出しはできないだろう。いくら何でも、それは無責任に過ぎる。2016年に都知事に当選したばかりなんだから、批判が集中するに決まってる。となると、「日本初の女性首相を実現させよう」という選挙はできない。それなら「小さな党」を当面作っておくだけでもいいのでは?
公明党からは都政を優先させてほしいと相当に強い要望が出ていた。公明は都政では「都民ファースト」と選挙協力を行い、都政の与党になっている。一方、国政では自民党と連立を組んでいる。今回は国政選挙なんだから、自民党と「希望の党」が競合する場合、自民党を支援するのが当たり前だ。だが、3カ月前の都議選では「都民ファースト」に入れたんだから、そう簡単に納得できるだろうか。いくら固い公明支持者だって、小池知事の応援演説を聞けば、動いてしまう人もいないだろうか。
そういう問題があるから、公明党筋からは「都政の協力関係を見直すかも」という話も出ている。一方、小池氏は総理大臣指名選挙では「公明党代表の山口那津男氏が良いのでは」などとムチャクチャなことを言っている。長く国会議員をしているんだから、自分の発言の意味は判っているだろう。これはほとんど「国政の自公連立の方を辞めたら」というのに近い。
支持・不支持を別にして、小池氏の選挙勘はあなどれない。1992年に日本新党から参院選に出て当選。以後、1993年に衆院転身。その後、新進党に参加し、解党時は小沢一郎氏の自由党に参加。2000年に自由党が連立を離脱した時は、小沢氏を離れて連立に残り、保守党を経て自民党へ。2005年の郵政解散では地元の兵庫から、東京10区に「刺客」として参戦して圧勝。そして、2016年に都知事選に立候補して当選。2017年都議選では「都民ファーストの会」が圧勝。
一つ一つの行動は割と知られているだろうが、改めてこうして見ていくと、一度も選挙に負けていない。二世、三世議員として、長年の地盤があって誰もは入れ込めないというわけじゃない。参院から衆院へ、兵庫から東京へ。それぞれリスクある行動だ。都知事選もそうだし、夏の都議選も同様。むしろ意外とも思える大胆な行動で政治的な力を増してきた。そういう人がなぜ?
五輪を控えて中央政府との協力は欠かせない。都政運営を考えると、公明との摩擦は避けたい。それを考えると、今回のような突然の選挙では、むしろあまり関わらない方が得策なんじゃないだろうか。若狭・細野両氏を中心に小さく作っておいて、2019年参院選あたりから本格参戦する。いくらでも言い様はある。「都政の課題に専念したい」「五輪成功は超党派的課題だ」「小さく生んで大きく育てる」とかなんとか言ってれば、大方は納得するに違いない。
それなのに、リスクを取って代表となって参戦する。僕は「勝機を感知した」としか思えない。全国に立てるようなことを言ってるけど、権力の源泉は都知事であることにある。東京の小選挙区で勝てないと、どこでも勝てない。2014年衆院選で、東京の25小選挙区では、自民党の23勝2敗だった。自民が負けたのは、長妻昭と柿沢未途だけ。(柿沢は何でも「希望」に移りたいようだが。)だから、「希望の党」は自民党を倒さないと議席が増えない。それを目指すということだ。
しかし、そのための候補者を短期間に見つけられるのか? そこで考えられるのが、候補者バンクとしての民進党である。民進党ごとではないにせよ、どんどん離党を勧める。民進党をこぼれ落ちて来る人に「踏絵」を踏ませて、自民に匹敵する「保守党」を作る。いま安倍批判をすれば、どっと「希望の党」に流れてくる。都議選で起こった、自民激減、民進解体が首都圏で起こり得る。
さあ、どうする? それはともかく、選挙戦が始まると、言い方はソフトかもしれないが小池氏の安倍批判が激しくなるに違いない。本来、安倍首相と対比されるべきは、野党第一党代表の前原氏である。だけど、テレビの報道は多分、安倍と小池をクローズアップする。そういう構図になり得る。そういう「勝機」を今小池氏が感じ取ったということだろう。しかし、まだだれが出るかが判らない。東京で本気で勝ちに行くのなら、8区の石原伸晃、11区の下村博文、24区の萩生田光一などに対抗できる候補を見つけられるかにかかっている。ここに、自分が郵政選挙で経験したような「話題性たっぷりの刺客」をぶつけられるのか。注目するところだ。
ところで、「希望の党」は総理大臣指名選挙で誰の名を書くのか。代表を知事が務める。これは「日本維新の会」の松井大阪府知事と同じだというが、その「維新」の松井氏にも同様の問題がある。衆議院の小選挙区では、候補者が誰を内閣首班に推すか、事前に決まってないのはおかしい。2012年衆院選の「日本維新の会」は、橋下徹、石原慎太郎両氏が「共同代表」だった。2014年衆院選の「維新の党」は、橋下徹、江田憲司両氏が「共同代表」。実は国会議員ではない人がトップの党が、衆議院選挙に臨むのは初めてなのだ。(昔、社会党委員長を飛鳥田一雄横浜市長が務めたことがあるが、直近の衆院選に立候補して当選したから問題は生じない。)これじゃ無責任と言われても当然なのではないか。そこが「希望の党」の最大の弱点だろう。
「希望の党」に希望はあるかというのは、大体二つの意味がある。一つはもちろん、「希望の党」が躍進することが日本の「希望」につながるのかという問題。もう一つは、「希望の党」から出る候補者にとって、希望の持てる選挙情勢になるかどうかという問題。僕は大体どこの党にも大した期待は抱いていない。もちろん「希望の党」にも特に大きな希望は見出さない。都議選以後の小池氏、並びに「都民ファーストの会」の行動を見ても、何してるんだと思うことが多い。
だけど、まあ公約も判らなければ、どんな候補が出てくるかも判らない現時点では、もう少し見ていることにしたいと思う。いま書こうかと思うのは、「希望の党」を小池氏自ら引っ張っていく意味についてである。ちょっと前から、自民党を離党した若狭勝氏と、民進党を離党した細野豪志氏が新党の立ち上げを画策していた。だが、この「若狭・細野新党」では、どう見ても力不足。小池氏に先頭に立ってほしいという要望は強いものがあっただろう。
とは言うものの、自分が都知事を辞めて国政に打って出ることはできない。2020年五輪を終えるまでは、都政投げ出しはできないだろう。いくら何でも、それは無責任に過ぎる。2016年に都知事に当選したばかりなんだから、批判が集中するに決まってる。となると、「日本初の女性首相を実現させよう」という選挙はできない。それなら「小さな党」を当面作っておくだけでもいいのでは?
公明党からは都政を優先させてほしいと相当に強い要望が出ていた。公明は都政では「都民ファースト」と選挙協力を行い、都政の与党になっている。一方、国政では自民党と連立を組んでいる。今回は国政選挙なんだから、自民党と「希望の党」が競合する場合、自民党を支援するのが当たり前だ。だが、3カ月前の都議選では「都民ファースト」に入れたんだから、そう簡単に納得できるだろうか。いくら固い公明支持者だって、小池知事の応援演説を聞けば、動いてしまう人もいないだろうか。
そういう問題があるから、公明党筋からは「都政の協力関係を見直すかも」という話も出ている。一方、小池氏は総理大臣指名選挙では「公明党代表の山口那津男氏が良いのでは」などとムチャクチャなことを言っている。長く国会議員をしているんだから、自分の発言の意味は判っているだろう。これはほとんど「国政の自公連立の方を辞めたら」というのに近い。
支持・不支持を別にして、小池氏の選挙勘はあなどれない。1992年に日本新党から参院選に出て当選。以後、1993年に衆院転身。その後、新進党に参加し、解党時は小沢一郎氏の自由党に参加。2000年に自由党が連立を離脱した時は、小沢氏を離れて連立に残り、保守党を経て自民党へ。2005年の郵政解散では地元の兵庫から、東京10区に「刺客」として参戦して圧勝。そして、2016年に都知事選に立候補して当選。2017年都議選では「都民ファーストの会」が圧勝。
一つ一つの行動は割と知られているだろうが、改めてこうして見ていくと、一度も選挙に負けていない。二世、三世議員として、長年の地盤があって誰もは入れ込めないというわけじゃない。参院から衆院へ、兵庫から東京へ。それぞれリスクある行動だ。都知事選もそうだし、夏の都議選も同様。むしろ意外とも思える大胆な行動で政治的な力を増してきた。そういう人がなぜ?
五輪を控えて中央政府との協力は欠かせない。都政運営を考えると、公明との摩擦は避けたい。それを考えると、今回のような突然の選挙では、むしろあまり関わらない方が得策なんじゃないだろうか。若狭・細野両氏を中心に小さく作っておいて、2019年参院選あたりから本格参戦する。いくらでも言い様はある。「都政の課題に専念したい」「五輪成功は超党派的課題だ」「小さく生んで大きく育てる」とかなんとか言ってれば、大方は納得するに違いない。
それなのに、リスクを取って代表となって参戦する。僕は「勝機を感知した」としか思えない。全国に立てるようなことを言ってるけど、権力の源泉は都知事であることにある。東京の小選挙区で勝てないと、どこでも勝てない。2014年衆院選で、東京の25小選挙区では、自民党の23勝2敗だった。自民が負けたのは、長妻昭と柿沢未途だけ。(柿沢は何でも「希望」に移りたいようだが。)だから、「希望の党」は自民党を倒さないと議席が増えない。それを目指すということだ。
しかし、そのための候補者を短期間に見つけられるのか? そこで考えられるのが、候補者バンクとしての民進党である。民進党ごとではないにせよ、どんどん離党を勧める。民進党をこぼれ落ちて来る人に「踏絵」を踏ませて、自民に匹敵する「保守党」を作る。いま安倍批判をすれば、どっと「希望の党」に流れてくる。都議選で起こった、自民激減、民進解体が首都圏で起こり得る。
さあ、どうする? それはともかく、選挙戦が始まると、言い方はソフトかもしれないが小池氏の安倍批判が激しくなるに違いない。本来、安倍首相と対比されるべきは、野党第一党代表の前原氏である。だけど、テレビの報道は多分、安倍と小池をクローズアップする。そういう構図になり得る。そういう「勝機」を今小池氏が感じ取ったということだろう。しかし、まだだれが出るかが判らない。東京で本気で勝ちに行くのなら、8区の石原伸晃、11区の下村博文、24区の萩生田光一などに対抗できる候補を見つけられるかにかかっている。ここに、自分が郵政選挙で経験したような「話題性たっぷりの刺客」をぶつけられるのか。注目するところだ。
ところで、「希望の党」は総理大臣指名選挙で誰の名を書くのか。代表を知事が務める。これは「日本維新の会」の松井大阪府知事と同じだというが、その「維新」の松井氏にも同様の問題がある。衆議院の小選挙区では、候補者が誰を内閣首班に推すか、事前に決まってないのはおかしい。2012年衆院選の「日本維新の会」は、橋下徹、石原慎太郎両氏が「共同代表」だった。2014年衆院選の「維新の党」は、橋下徹、江田憲司両氏が「共同代表」。実は国会議員ではない人がトップの党が、衆議院選挙に臨むのは初めてなのだ。(昔、社会党委員長を飛鳥田一雄横浜市長が務めたことがあるが、直近の衆院選に立候補して当選したから問題は生じない。)これじゃ無責任と言われても当然なのではないか。そこが「希望の党」の最大の弱点だろう。