尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「孤狼の血 LEVEL2」はやっぱり面白いけど、

2021年09月02日 22時50分12秒 | 映画 (新作日本映画)
 白石和彌監督の映画「孤狼の血 LEVEL2」が公開された。東京は猛暑の8月から突然秋冷の9月になって、体も付いていけないような日々。そんな疲れた日々にあっても、絶対に寝ないで見られる熱い映画である。まあ疑問点も多いんだけど、あまり考え込まずに松坂桃李の活躍を楽しんで見れば良いのかもしれない。

 第一作の原作柚月裕子弧狼の血」(2015)は高く評価され、日本推理作家協会賞を受けた。映画化された白石和彌監督の「弧狼の血」(2018)もキネマ旬報ベストテン5位に選ばれた。原作も映画も広島県呉原市(架空)で起こる暴力団抗争と警察の対応を描いている。主人公の大上役所広司)は時には法律を無視しても暴力団と手を結び、町の治安を守ろうとする警官だった。ところが大上は前作の最後で殺されてしまった。

 前作では大上に付く若い警官日岡松坂桃李)がいた。日岡は最初は大上に疑問を持ちながらも、次第に大上の手法に共感するようになっていく。実は日岡には「秘密のミッション」があったのだが、大上の秘密ノートを受け継ぐ警官になってしまった。前作のラストでは日岡が裏で仕組んで尾谷組五十子組長石橋蓮司)を襲撃して殺害した。原作はその後日岡を主人公にして2作書かれているが、映画は基本的設定は前作を受けつつオリジナルストーリーとして作られた。1988年の前作から3年後である。

 殺害された五十子組長を慕う上林成浩鈴木亮平)が出所してくるところから始まる。上林(うえばやし)はさっそく刑務官の妹がやっているピアノ教室を訪れ報復をする。3年前の事件はすでに手打ちになっていたが、上林はそれを認めず五十子組内で思うままに暴れ始める。「ピアノ講師殺人事件」の捜査本部に日岡も呼ばれ、同僚として定年間近の瀬島中村梅雀)と組む。日岡たちは上林の獄中の様子を聞き、事件に関与している疑いを強めるが証拠が挙らない。日岡は親しくしている「華」のママ近田真緒西野七瀬)の弟近田幸太村上虹郎)を五十子組にスパイとして送り込んでいる。上林はあまりにもひどいと近田幸太(チンタ)から情報を得るが…。
(日岡と瀬島)
 原作も前作も「仁義なき戦い」(というか「県警対組織暴力」)みたいな話である。そのために広島を舞台にしてるわけで、もう「パスティーシュ」(模倣)というか「オマージュ」である。大真面目にやっているから「パロディ」ではなく、和歌で言う「本歌取り」みたいなものである。設定に現実性があるかどうかという批判をしても意味はない。しかし、2作目の上林はいくら何でもモンスター過ぎると思う。完全にサイコパスであり、多くの人が対応を誤って怪物を育ててしまった。しかし、そういう上林を大迫力で演じた鈴木亮平はすごいと思う。正直言って見ていて怖かった。
(上林とチンタ)
 間違いなくジャンル映画の傑作だが、この面白さは演技やスタッフの力量の確かさに支えられている。また白石監督の演出技量にも感嘆するしかない。日岡と関わる近田真緒を演じた西野七瀬は元乃木坂46メンバーとのことだが、大変良かったと思う。これはむしろSFで言うパラレルワールドだと思って、何故か広島県で「仁義なき戦い」が続いてるという世界の話として見た方がいいと思う。広島各地でロケされている。映画内では残虐シーンが多いので、嫌いな人は見ない方がいいと思う。
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