『ロスト・キング 500年越しの運命』 という映画をやっている。映画的にはあまり評判になってなくて、きっとそう大した映画じゃないんだろうなと思ったけど、題材が興味深くて見に行った。案の定、映画の出来は普通の佳作だったが、内容的にはこんなことがあったんだと驚いた。歴史好きには興味深いと思う。冒頭に「実話に基づく」と出るが、一介の歴史マニアの女性が英国史の謎である「リチャード3世の遺骨」を見つけてしまった話である。2012年の話だが、僕は全く知らなかった。
リチャード3世(1452~1485、在位1483~1485)と言われても、多くの日本人はよく判らないだろう。僕も同じで、なんかシェークスピアの戯曲にあったなあ程度のイメージしかない。それも読んだことも見たこともない。5百年以上前の国王で、戦死した最後のイングランド王だという。プランタジネット朝最後の王で、シェークスピアの戯曲では悪逆非道な「せむし男」に描かれているという。1485年のボスワースの戦いで戦死し、死体は川に流されたなどと言われてきた。しかし、悪評は次のチューダー王朝が流したもので、リチャード3世は立派な人物だったと考える「リカーディアン」と呼ばれる人々が活動を続けてきたという。日本で言えば室町時代で、応仁の乱が終結したあと、山城の国一揆(1585年)とか加賀一向一揆(1588年)があった頃になる。
(リチャード3世)
仕事も家庭も問題を抱えるフィリッパ・ラングレー(サリー・ホーキンス)という女性が、たまたま子どもと一緒にシェークスピア『リチャード3世』を見に行った。それをきっかけに、フィリッパはリチャード3世に取り憑かれてしまったのである。映画では劇で演じたリチャード3世が、現実となって常に現れて助言したりする。そこがリアリズムを越えた描写になっている。主役のサリー・ホーキンスは『ブルー・ジャスミン』(助演)や『シェイプ・オブ・ウォーター』(主演)でアカデミー賞にノミネートされたが、どっちも自分の思い通りに生きるタイプを演じていた。今回も完全にリチャード探しにのめり込む危ない女性である。
(フィリッパとリチャード3世)
リチャード3世の遺骨は教会に葬られたという説もあったが、その教会が今どこにあるか不明である。いろんな事を言う人がいるが、そういう場所はその後も空き地になっていることが多いと言われる。今は福祉会館の駐車場になっている場所を見に行くと、何となく気になる。問題は現実に発掘出来る体制を整えることで、イングランド中部のレスターの市当局や大学などに掛け合うが、なかなかうまく行かない。それもある意味当然で、単なる主婦の思い込みだと皆思っているのである。いろんな幸運が重なり、クラウドファンディングも行って、ようやく駐車場を発掘出来るようになったが…。
(発掘の様子)
実話の映画化なので、いずれ遺骨が出ることは予測出来て、その意味でのサスペンスはない。発掘に成功すると、推進者のフィリッパは除け者にされ、レスター大学の手柄になっていくが、それもありがちのことだろう。兄弟姉妹の子孫が突きとめられ、ミトコンドリアのDNA鑑定などを経て、遺骨はリチャード3世のものと確認された。そこから再埋葬されるまでの経過については、ウィキペディアに「リチャード3世の発掘と再埋葬」に詳細な記述がある。僕は全く知らなかったが、日本では報道されたんだろうか。
(実際のフィリッパ・ラングレー)
監督のスティーヴン・フリアーズ(1941~)も、もう80代になっている。80年代から近年までコンスタントに活躍してきた監督で、特にヘレン・ミレンがエリザベス女王役でアカデミー主演女優賞を得た『クイーン』(2006)で知られている。『マイ・ビューティフル・ランドレット』(1985)、『危険な関係』(1985)、『グリフターズ/詐欺師たち』(1990)の頃が一番面白かっただろうか。最近では『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』(2016)、『ヴィクトリア女王 最期の秘密』(2017)などがあるが見ていない。こうしてみると安心して見られる英国秘史を任せられる監督なのかもしれない。
リチャード3世(1452~1485、在位1483~1485)と言われても、多くの日本人はよく判らないだろう。僕も同じで、なんかシェークスピアの戯曲にあったなあ程度のイメージしかない。それも読んだことも見たこともない。5百年以上前の国王で、戦死した最後のイングランド王だという。プランタジネット朝最後の王で、シェークスピアの戯曲では悪逆非道な「せむし男」に描かれているという。1485年のボスワースの戦いで戦死し、死体は川に流されたなどと言われてきた。しかし、悪評は次のチューダー王朝が流したもので、リチャード3世は立派な人物だったと考える「リカーディアン」と呼ばれる人々が活動を続けてきたという。日本で言えば室町時代で、応仁の乱が終結したあと、山城の国一揆(1585年)とか加賀一向一揆(1588年)があった頃になる。
(リチャード3世)
仕事も家庭も問題を抱えるフィリッパ・ラングレー(サリー・ホーキンス)という女性が、たまたま子どもと一緒にシェークスピア『リチャード3世』を見に行った。それをきっかけに、フィリッパはリチャード3世に取り憑かれてしまったのである。映画では劇で演じたリチャード3世が、現実となって常に現れて助言したりする。そこがリアリズムを越えた描写になっている。主役のサリー・ホーキンスは『ブルー・ジャスミン』(助演)や『シェイプ・オブ・ウォーター』(主演)でアカデミー賞にノミネートされたが、どっちも自分の思い通りに生きるタイプを演じていた。今回も完全にリチャード探しにのめり込む危ない女性である。
(フィリッパとリチャード3世)
リチャード3世の遺骨は教会に葬られたという説もあったが、その教会が今どこにあるか不明である。いろんな事を言う人がいるが、そういう場所はその後も空き地になっていることが多いと言われる。今は福祉会館の駐車場になっている場所を見に行くと、何となく気になる。問題は現実に発掘出来る体制を整えることで、イングランド中部のレスターの市当局や大学などに掛け合うが、なかなかうまく行かない。それもある意味当然で、単なる主婦の思い込みだと皆思っているのである。いろんな幸運が重なり、クラウドファンディングも行って、ようやく駐車場を発掘出来るようになったが…。
(発掘の様子)
実話の映画化なので、いずれ遺骨が出ることは予測出来て、その意味でのサスペンスはない。発掘に成功すると、推進者のフィリッパは除け者にされ、レスター大学の手柄になっていくが、それもありがちのことだろう。兄弟姉妹の子孫が突きとめられ、ミトコンドリアのDNA鑑定などを経て、遺骨はリチャード3世のものと確認された。そこから再埋葬されるまでの経過については、ウィキペディアに「リチャード3世の発掘と再埋葬」に詳細な記述がある。僕は全く知らなかったが、日本では報道されたんだろうか。
(実際のフィリッパ・ラングレー)
監督のスティーヴン・フリアーズ(1941~)も、もう80代になっている。80年代から近年までコンスタントに活躍してきた監督で、特にヘレン・ミレンがエリザベス女王役でアカデミー主演女優賞を得た『クイーン』(2006)で知られている。『マイ・ビューティフル・ランドレット』(1985)、『危険な関係』(1985)、『グリフターズ/詐欺師たち』(1990)の頃が一番面白かっただろうか。最近では『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』(2016)、『ヴィクトリア女王 最期の秘密』(2017)などがあるが見ていない。こうしてみると安心して見られる英国秘史を任せられる監督なのかもしれない。