アメリカ映画界の「ニューヨーク・インディーズ」の代表的な監督、ジム・ジャームッシュ(1953~)の新作「パターソン」が上映中。静かで小品的な感じだから、好き嫌いはあるかと思うけど、なんだかアメリカ映画っぽくない滋味あふれる作りが好ましい。珍しく「詩」にまつわる寓話のような作品だ。
ジム・ジャームッシュについて書くのは初めてだと思うけど、「ストレンジャー・ザン・パラダイス」(1984)や「ダウン・バイ・ロー」(1986)がとても良かったから、その後つまらない映画を作っても見続けるのである。まあ、「ミステリー・トレイン」(1989)や「ナイト・オン・ザ・プラネット」(1991)あたりまでが面白かったような気がする。21世紀になってからは、「ブロークン・フラワーズ」(2005)がカンヌ映画祭審査員特別グランプリを取ったけれど、正直全然面白くなかった。
今回の「パターソン」(Paterson)はアメリカのニュージャージー州(ニューヨークの南方)に実在する町パターソンに住むバス運転手パターソンの日常を描くという映画。バス運転手をアダム・ドライヴァー(Adam Driver)が演じるという二重のダジャレのような設定。アダム・ドライヴァーは「沈黙」でガルぺ神父(主役のアンドリュー・ガーフィールド演じるロドリゴ神父と一緒に日本に来た神父)を演じていた人。(今後「スターウォーズ/最後のジェダイ」が公開される。)
月曜から始まり、日曜に終わる映画。朝、まだ寝ている妻をおいてパターソンは家を出る。徒歩でバスターミナルへ出かけ、バスの中で詩を書いている。スマホもタブレットも持たない。休憩時間(?)には滝のある公園で詩を書いている。(この滝は「グレート・フォールズ」という有名な滝で、昔はこの滝を利用した工業が発展したという。)そんな運転手がいるかと思うけど、別にいたって構わないだろう。家にはマーヴィンというブルドッグがいて、夜は散歩の途中で待たせてバーで一杯やる。
そんな決まりきった日々なんだけど、波乱を呼ぶのは妻とバーの客。妻(恋人?)のローラはゴルシフテ・ファラハニというイラン系で、すごい美人。でも、今度の日曜はカップケーキを町の広場で売ると意気込んだり、突然カントリー歌手を目指してギターを通販で買ったり…、今ひとつ判らない。パターソンも、詩を誰にも見せたことがなく、今度コピーしてくれとローラに言われている。何もないような日々も金曜日にはちょっとしたドラマが起きる。バスは故障するし、バーではもめ事が…。
そんな日々が過ぎていき、日曜日のカップケーキも大盛況。(だったということだが、セリフで説明されるだけでマーケットのシーンがないのも慎ましい。)だから、その夜は特別に出掛けることにする。パターソン出身者で一番有名な(銅像もあるとセリフがあり、映像も出てくる)ルー・コステロ(喜劇コンビ「アボットとコステロ」で有名だった)の映画をレイトショーで見に行くのだ。(これは「凸凹フランケンシュタインの巻」(1948)だろう。)そしてその後、また一事件あるんだけど、それは多分犬を飼ってたことがある人は、見ていて事前にアッと思うんじゃないかと思う。
「ミステリー・トレイン」以来の永瀬正敏の出演があると事前に知っていたけど、そう言えばどこで出てくるんだと思うと、最後の方で「日本人の詩人」として出る。なんだかもうけ役みたいな、ギフトを携えて。コステロ以外にも多くの有名人がパターソン出身で、その一人が詩人ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ(1983~1963)で、と言っても初めて名前も聞くんだが、何でもT・S・エリオット級の評価だという。町医者として過ごしながら詩を書いて、「パターソン」という詩集もある。日本でも翻訳されていて、それを永瀬正敏が持っている。アレン・ギンズバーグの生地でもあるという。
(永瀬正敏とアダム・ドライヴァー)
そんなパターソンに詩を書くバス運転手がいる。いかにも、ではないか。そんなことは知らずに見たけど、「日常の奇跡」のような「詩」のような映画。自分の中にも不思議があるけど、自分の外からも不思議はやってくる。それを主人公は「詩」という形で世界に定着させようとしている。簡単な英語で語られる詩ばかりで、字で画面に出てくるからお勉強にもなる。でも、そういう簡単な単語でも、詩を書けるというのは日本語でも同じ。日常の中にフシギがあり、そこに「詩」があるというのも、俳句や短歌に親しむ日本人の方が通じるかもしれない。変な映画ではあるが、結構好きだな。
*二つほど、アレっと思ったこと。一つはローラがギターを買って初めて練習した曲。「線路工事は続くよ どこまでも」、エッ、線路が続くんじゃくなく、工事がずっと続くという労働者の歌だったんだ!もう一つ、カントリー歌手、タミー・ウィネットだと思ってたら、「ワイネット」と発音してるじゃないか。「ファイブ・イージー・ピーセス」に流れる「スタンド・バイ・ユア・マン」を歌ってた人で、レコードも持ってる。)
ジム・ジャームッシュについて書くのは初めてだと思うけど、「ストレンジャー・ザン・パラダイス」(1984)や「ダウン・バイ・ロー」(1986)がとても良かったから、その後つまらない映画を作っても見続けるのである。まあ、「ミステリー・トレイン」(1989)や「ナイト・オン・ザ・プラネット」(1991)あたりまでが面白かったような気がする。21世紀になってからは、「ブロークン・フラワーズ」(2005)がカンヌ映画祭審査員特別グランプリを取ったけれど、正直全然面白くなかった。
今回の「パターソン」(Paterson)はアメリカのニュージャージー州(ニューヨークの南方)に実在する町パターソンに住むバス運転手パターソンの日常を描くという映画。バス運転手をアダム・ドライヴァー(Adam Driver)が演じるという二重のダジャレのような設定。アダム・ドライヴァーは「沈黙」でガルぺ神父(主役のアンドリュー・ガーフィールド演じるロドリゴ神父と一緒に日本に来た神父)を演じていた人。(今後「スターウォーズ/最後のジェダイ」が公開される。)
月曜から始まり、日曜に終わる映画。朝、まだ寝ている妻をおいてパターソンは家を出る。徒歩でバスターミナルへ出かけ、バスの中で詩を書いている。スマホもタブレットも持たない。休憩時間(?)には滝のある公園で詩を書いている。(この滝は「グレート・フォールズ」という有名な滝で、昔はこの滝を利用した工業が発展したという。)そんな運転手がいるかと思うけど、別にいたって構わないだろう。家にはマーヴィンというブルドッグがいて、夜は散歩の途中で待たせてバーで一杯やる。
そんな決まりきった日々なんだけど、波乱を呼ぶのは妻とバーの客。妻(恋人?)のローラはゴルシフテ・ファラハニというイラン系で、すごい美人。でも、今度の日曜はカップケーキを町の広場で売ると意気込んだり、突然カントリー歌手を目指してギターを通販で買ったり…、今ひとつ判らない。パターソンも、詩を誰にも見せたことがなく、今度コピーしてくれとローラに言われている。何もないような日々も金曜日にはちょっとしたドラマが起きる。バスは故障するし、バーではもめ事が…。
そんな日々が過ぎていき、日曜日のカップケーキも大盛況。(だったということだが、セリフで説明されるだけでマーケットのシーンがないのも慎ましい。)だから、その夜は特別に出掛けることにする。パターソン出身者で一番有名な(銅像もあるとセリフがあり、映像も出てくる)ルー・コステロ(喜劇コンビ「アボットとコステロ」で有名だった)の映画をレイトショーで見に行くのだ。(これは「凸凹フランケンシュタインの巻」(1948)だろう。)そしてその後、また一事件あるんだけど、それは多分犬を飼ってたことがある人は、見ていて事前にアッと思うんじゃないかと思う。
「ミステリー・トレイン」以来の永瀬正敏の出演があると事前に知っていたけど、そう言えばどこで出てくるんだと思うと、最後の方で「日本人の詩人」として出る。なんだかもうけ役みたいな、ギフトを携えて。コステロ以外にも多くの有名人がパターソン出身で、その一人が詩人ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ(1983~1963)で、と言っても初めて名前も聞くんだが、何でもT・S・エリオット級の評価だという。町医者として過ごしながら詩を書いて、「パターソン」という詩集もある。日本でも翻訳されていて、それを永瀬正敏が持っている。アレン・ギンズバーグの生地でもあるという。
(永瀬正敏とアダム・ドライヴァー)
そんなパターソンに詩を書くバス運転手がいる。いかにも、ではないか。そんなことは知らずに見たけど、「日常の奇跡」のような「詩」のような映画。自分の中にも不思議があるけど、自分の外からも不思議はやってくる。それを主人公は「詩」という形で世界に定着させようとしている。簡単な英語で語られる詩ばかりで、字で画面に出てくるからお勉強にもなる。でも、そういう簡単な単語でも、詩を書けるというのは日本語でも同じ。日常の中にフシギがあり、そこに「詩」があるというのも、俳句や短歌に親しむ日本人の方が通じるかもしれない。変な映画ではあるが、結構好きだな。
*二つほど、アレっと思ったこと。一つはローラがギターを買って初めて練習した曲。「線路工事は続くよ どこまでも」、エッ、線路が続くんじゃくなく、工事がずっと続くという労働者の歌だったんだ!もう一つ、カントリー歌手、タミー・ウィネットだと思ってたら、「ワイネット」と発音してるじゃないか。「ファイブ・イージー・ピーセス」に流れる「スタンド・バイ・ユア・マン」を歌ってた人で、レコードも持ってる。)